この薬局、だいたい平和だった

地方の個人薬局。
数店舗を運営し、門前の医院は大繁盛。処方箋は今日も滝のように流れ込む。
売り上げ、上々。
スタッフ、安定。
社長は薬剤師で、いわゆるいい人。
「うちはさ、信用で回してるから」
棚卸?やらない。忙しいから。信じてるから。
信頼は美徳です。
でも・・・。
根拠のない信頼は、無責任です。
第1章:母校の後輩、入社する
ある日、社長のもとにやってきたのは、出身校の後輩。
「先輩の薬局で働きたいんです!」
同じ大学。
同じ白衣。
同じ業界。
採用、即決。
「やっぱ、縁ってあるよな」
あります。
ただし、縁=信頼ではありません。
後輩はよく働き、よく話し、よく先輩を立てる。
「先輩、尊敬してます!」
この言葉、うそ偽りがないことは、誰の目にも明らかでした。
直ぐに皆の信頼を獲得し、いなければならない人になりました。
しかし、その信頼が、あとで一番重たくなるとは、このとき誰も知りませんでした。
第2章:数字が、静かに異変を告げる
ある日、社長が仕入れ帳を見て、つぶやきます。
「……あれ?」
最初は、こう思います。
門前医院が好調だから
高額薬が増えたから
処方が重たいから
経営には疎い薬局経営者に標準装備された、“都合のいい解釈スキル”が全開。
でも、棚卸をしてみると
不明ロス:数百万円
ここで、社長の中の“性善説”が、音を立てて揺れました。
第3章:張り込みは空振り、カメラは沈黙しない
社長、張り込みを始めます。
車の中。コンビニコーヒー。夜の薬局。
……何も起きない。
「俺、何してるんだろうな……」
でも、天井の隅に仕掛けた小さな隠し撮り用の監視カメラは、黙って仕事をしていました。
そこに映っていたのは
昼の顔とは違う、後輩の姿。
深夜の薬局。
迷いのない動き。
棚から消える箱。
リュックに入れられる医薬品。
さらに、昼間。
患者対応の合間。
スッ。
高額薬が、白衣のポケットへ。
この瞬間、社長は悟ります。
「これは、もう“出来心の窃盗”じゃない」
第4章:ただの横領じゃ、なかった
後輩がやっていたのは、単なる持ち出しではありませんでした。
盗んだ医薬品を、買い取り業者に流して、現金化していた。
発覚後、人を巻き込み、信頼する心を踏みにじる悪質な手口だったことも明らかになります。
この瞬間、この話は“薬局の不正”から、完全な“事件”に変わりました。
第5章:上映会

個室。
椅子ふたつ。パソコンひとつ。
社長は、隠し撮りした映像を再生します。
夜の薬局で動く懐中電灯、ちらっと映る顔。
白衣のポケット。消える箱。
後輩は、無言。目線が、床に落ちる。
沈黙のあと、ぽつり。
「……最初は、1箱だけでした」
不正の世界で、あまりにも有名な“第一声”。
第6章:いちばん重かったのは、薬じゃない
警察。弁護士。帳簿修正。向精神薬の保健所対応。
社長は、あとでこう言ったそうです。
「盗まれた薬より、後輩だったことの方が、ずっときつかった」
自分を慕っていた後輩と、居酒屋で楽しく話していた記憶がむなしくよみがえったそうです。
そして棚卸は、月次になりました。
高額薬は、毎日棚卸になりました。
そして・・・。
天井の隅に、あの時の隠し撮り監視カメラは撤去され、立派なカメラが常設されました。
エピローグ:カメラは、未来を見ている
社長は、そのカメラを見上げて言います。
「これ、犯人を捕まえるためのもんじゃなかったな」
「信用できる人が、ずっと信用され続けるための装置だったんだ」
もし、最初からあったら。
夜の薬局に入る前に。
白衣のポケットに手を伸ばす前に。
あのカメラのレンズが、小さく、こう言ったかもしれません。
「やめとけ」
現場目線で考える「防犯カメラ」という選択

この話、防犯の本質は証拠を残すことだけじゃないと教えてくれます。
防犯カメラの本当の役割
抑止力:
「見られている」という意識が、出来心を止める可視化:
夜間・バックヤード・棚の死角を“見える場所”に変える経営の防御:
不正だけでなく、トラブルやクレーム対応の証拠にもなる
薬局は、
高額医薬品がある、向精神薬がある
忙しくて、頻繁にすべてを棚卸することは困難
信頼で回っている職場
だからこそ、“人の良心に頼り切らない仕組み”が必要なんです。
薬局向け・防犯カメラ導入のポイント
設置場所
出入口
調剤室
高額薬棚付近
レジ・金庫周辺
機能
24時間録画
可能なら夜間撮影(赤外線)
できれば動体検知・通知
安心なのはスマホで遠隔確認
法的配慮
「防犯カメラ作動中」の掲示
更衣室・トイレへの設置はNG
映像データの管理ルールを決める
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もし、
「どれを選べばいいかわからない」
「工事や設定が不安」
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最後に:この話の本当のオチ
この事件、不正の話に見えて、実は・・・。
“守れたかもしれなかった未来”の話なんですよね。
出来心の不正を防ぐことができれば、その人の人生も、社長との人間関係も、もっといいものになったのかもしれない。
そんな未来を守ることができたかもしれない。
薬局は、人に優しくする場所だけど、不正にはちゃんと厳しくしておかないといけない。
白衣のポケットに、何かを入れようかなという出来心
天井の隅のカメラは、そんな人間の心の弱さに付け込ませないようにするためのものだと思います。






















