「窓際薬剤師」という言葉を読んで、
僕はコーヒーを一口飲んで、少しだけ考え込みました。
……いや、正確には、考え込むフリをしました。
本当は、窓の外を見ながら、今日の晩ごはんのことを考えていました。
この文章は、誰かを論破するためのものではありません。
誰かの考えを、正面から投げ飛ばすためのものでもありません。
ただ、
「別の考え方も、ここに置いておいていいんじゃない?」
という、ちょっとした折りたたみイスを出すだけです。
座るかどうかは、あなた次第。
仕事を「人生の中心」にしない勇気

薬剤師の仕事には、たしかに「この仕事、やっててよかったなあ」
って思える瞬間があります。
フォローの電話の向こうで聞こえる、
「ああ、よくなりました」の一言。
在宅先で、なぜか毎回もらう缶ジュース。
(冷蔵庫、うちより豪華なやつ)
小さな子どもが、帰り際に手を振ってくれる。
(だいたい、こちらが先に振っている)
こういう瞬間が、
仕事に、ちゃんと“意味”を連れてきてくれます。
でも、ここで、ゆるやく的な問いをひとつ。
誰かにとっての主役は、家族かもしれない。
誰かにとっての主役は、趣味かもしれない。
誰かにとっての主役は、旅行かもしれないし、
ビットコインやFXのチャートかもしれないし、
推し活かもしれない。
その人にとって、薬剤師という仕事が、
「生活を支える土台」
くらいのポジションでも、別に、世界は崩れません。
淡々と働く人は、実はすごい

「ただ処方箋をさばいているだけ」
「最低限の業務しかしていない」
そう言われがちな働き方にも、ゆるやく的には、ちょっとしたリスペクトがあります。
毎日、同じ手順を、同じ精度で。
眠くても、忙しくても、患者さんの前では、だいたい同じテンション。
これ、地味に、めちゃくちゃ難しいです。
感情を仕事に持ち込まない。
ヒーローにもならない。
でも、事故も起こさない。
派手なエピソードは生まれません。
感謝の言葉で、涙が出ることも、たぶん少ない。
でも、その“何も起きない一日”の上に、患者さんの生活は、ちゃんと積み重なっています。
誰かが主役をやるなら、誰かは、舞台係でもいい。
スポットライトは当たらないけど、照明が落ちたら、全員コケます。
「消化試合」って、そんなに悪い?

「消化試合」という言葉。
なんだか、やる気ゼロ、魂どっか行った、みたいなイメージがあります。
でも、人生のすべての時間が、
決勝戦
である必要、ありますか?
勝たなくてもいい日。
評価されなくてもいい日。
ただ、
「今日も無事に終わったな」
って思える日があっても、それはそれで、結構いいものです。
経営の論理と、生活の論理

意識の高い人の目線はこうです。
売り上げ。
人材。
投資。
リスク。
薬剤師であれば服薬指導や処方提案とか。
一方で、現場の多くの人がみているのはこうです。
今日のシフト。
今日の忙しさ。
今日の晩ごはん。
家族の様子。
週末の予定。
どちらも、ちゃんとした“論理”です。
ただ、何に重点を置いているかが、ちょっと違うだけ。
そのズレが、ときどき、
「やりがい」
という言葉の意味を、すれ違わせます。

人生をかける仕事って、そんなに多い?
ここで、ゆるやく的・大きな声では言えない質問です。
人生を丸ごと預けられる仕事って、この世に、どれくらいあります?
世界を救う人。
会社を背負う人。
芸術に命を燃やす人。
……で、
月曜日の朝、眠い目で白衣を着ている我々は?
多くの人にとって、仕事は、生きるための手段で、生きがいは、別の棚に置いてある。
それでも、今日の仕事を、ちゃんと終える。
派手じゃないけど、物語にもならないけど、それはそれで、十分に、えらい。
窓際という、意外といい席
窓際には、光が入ります。
エース席みたいな緊張感は、ありません。
スポットライトも、たぶん来ません。
でも、外の天気がわかる。夕焼けが見える。
仕事の外側に、
家族がいて、
趣味があって、
別の人生が広がっている。
その景色を眺めながら働く、というポジションも、悪くない。
選ばない、という選択肢

「もっと踏み込めるはずだ」
「この仕事の先に、もっと意味がある」
この言葉に、背中を押される人も、たくさんいます。
でも、この言葉に、ちょっとだけ、疲れてしまう人も、います。
前に出る自由があるなら、一歩引く自由もあっていい。
夢中になる選択肢があるなら、ゆるく続ける選択肢も、あっていい。
最後に
この文章は、「窓際薬剤師」を、肯定するためのものでも、否定するためのものでもありません。
ただ、
同じ白衣の中に、違う人生が入っていてもいい。
それだけの話です。
誰かは、
患者さんの「ありがとう」で、元気になる。
誰かは、
家に帰ってからのビールで、元気になる。
どっちも、
明日の自分を動かす、
大事なエネルギーです。
同じカウンターの向こうとこちらで、
見ている景色が、ちょっと違っても。
それは、
たぶん、
そんなに悪いことじゃありません。
















