以前、
「薬剤師が買ってよかったもの10選」という記事を書きました。
調剤薬局の薬剤師が、薬局で業務で、買ってよかったなと思うもの10選
その中で紹介したアイテムのひとつが、
PTPシートから錠剤を取り出す道具、トリダスPROです。
ただこの道具、
薬剤師界隈ではあまり評判がよくありません。
「遅い」
「効率が悪い」
「結局使わなくなる」
まぁ、言いたいことはわかります。
トリダスPROが評価されにくい理由

正直に言えば、
トリダスPROは時短アイテムではありません。
速さの比較ならトリダスを使用するよりも、
手で押し出したほうが確実に早い。
スピード重視で考えれば、
「使えない」「微妙」という評価になるのも自然です。
でも、ここで一度だけ、
視点を変えてみてほしいと思っています。
一包化で、本当に削られているもの

一包化作業で、
PTPシートから錠剤を取り出す行為を、
1日で何百回も繰り返す。
これ、地味ですが、
親指の関節や指先に、確実にダメージが蓄積します。
しかもこの手の不調は、エンシュアリキッド山積みの台車で足を轢いてしまった!みたいに派手?さはありません。
じわじわ来て、
気づいたら「ずっと痛い」。
そして厄介なことに、
指を痛めても、ほぼ労災にはなりません。
「使いすぎですね」で終わりです。
注)エンシュア台車に轢かれたらそれは労災です。
経営者と、雇われ薬剤師は立場が違う
自分で薬局を経営しているなら、
スピード=利益。
速さを追い求めるのは合理的です。
でも、雇われ薬剤師の場合はどうでしょう。
自分の体を削ってスピードを出しても、
給料が上がるわけでも、
評価が劇的に変わるわけでもありません。
壊れるのは、
自分の指だけです。
トリダスPROは「速くする道具」ではない
だから私は思っています。
トリダスPROは、
作業を速くする道具ではありません。
消耗しないための道具です。
速くはない。
でも、指に優しい。
指の関節が痛くならない。
「今日は一包化が多いけど投薬も多くしんどいな」という日は、
「今日はトリダスで、ゆっくりやろう」
それでいい。
ゆっくり一包化すると、脳も休める
もうひとつ、
個人的に大事だと思っているポイントがあります。
トリダスPROでの作業は、
判断が少ない、ほぼ単純作業です。
手は動かしているけど、
脳は少し休める。
激務の薬局では、
・電話
・問い合わせ
・疑義照会
・服薬指導
と、常に頭をフル回転させています。
そんな中で、
仕事を止めずに脳をクールダウンさせる時間を
意図的に作れるのは、実はかなり重要です。
忙しい人ほど、
無意識にこれをやっています。
あえて単純作業を挟む
すべてを全力でやらない
スピードを落として呼吸を整える
仕事をしながら脳を休めるスキル。
これ、激務薬局では立派な生存技術です(笑)
評価が割れるのは、基準が違うから
トリダスPROが合わない人がいるのは事実です。
全員におすすめできる道具ではありません。
でもそれは、
「速さ」だけで評価しているからかもしれません。
時短か? → いいえ
効率化か? → いいえ
でも、
消耗を減らせるか? → はい
長く働けるか? → たぶん、はい
トリダスPROは、
仕事を効率化するための道具ではなく、
仕事を続けるための道具だと思っています。
おわりに
「遅いから使わない」
それも正解。
でも、
「遅くてもいいから、壊れないようにやる」
それも正解です。
一包化が多い日、
指がしんどい日、
脳が疲れている日。
そんな日に、
トリダスPROを選ぶという判断は、
決して甘えではありません。
速さより、持続性。
全力より、余白。
そうやって
静かに働き続けるための選択肢として、
トリダスPROは、意外と悪くない道具です。


















