ある日の午後。
レジカウンターに、ちょっと慌てた様子のおばあちゃんがやって来ました。
「ねぇ、この前ここで買った風邪薬なんだけど…飲んだら視界が暗くなっちゃって」
症状は服用から数時間後に発症。
まるで部屋の照明を落としたように視界の端が欠け、物の輪郭がぼやけて見える
そんな状態だったそうです。
登録販売者ちゃんの脳内で、瞬時にピンと来るワード
「緑内障」。
急性閉塞隅角緑内障って?
緑内障には大きく分けて「開放隅角型」と「閉塞隅角型」があります。
今回のように風邪薬や鼻炎薬の抗コリン作用成分(例:ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンなど)で問題になるのは、主に急性閉塞隅角緑内障です。
目の奥には「隅角(ぐうかく)」という房水(目の中の水)の出口があります。
閉塞型ではこの出口がもともと狭く、薬の作用で瞳孔が開く(散瞳)とさらに塞がり、房水が急にたまって眼圧が急上昇します。
その結果、視界が暗くなる、光がにじんで見える(虹視)、激しい目の痛み、頭痛、吐き気などが出ます。
放置すると数日で失明の危険があるため、即時の眼科治療が必要です。
最近は健診や眼科受診で早期発見されることが多く、閉塞型のまま放置されるケースは少ないですが、「自分は緑内障」とは知っていても型までは把握していない人は意外と多く、潜在的リスクは残っています。
そして、眼科の受診をしていないため、そもそも緑内障だということに気づいていないこともあります。
聞き込みスタート

「普段、目の病気はありませんか?」
おばあちゃん、あっさりと答えます。
「昔から健康で、ここ何十年も病院や健康診断なんてやってないよ!」
(やっぱり…!)と内心確信する登録販売者ちゃん。
風邪薬のパッケージを確認すると、その風邪薬には抗コリン成分が含まれていました。
→ 閉塞型では、この成分が眼圧上昇の引き金になります。
危険信号と即対応
登録販売者ちゃんは即座に説明します。
「この成分は緑内障の中でも“閉塞型”の方には注意が必要なんです。
眼圧が上がって視野が狭くなることがあるので、今の症状はすぐに眼科を受診してください」
おばあちゃんは驚いた顔で頷き、その足で眼科へ。
後日、
「あの時言われなかったら、しばらく放っておくところだったよ」
と感謝されました。
このケースの教訓
緑内障は型の確認が重要(開放型か閉塞型か)。
不明な場合や症状がある場合は抗コリン成分を避ける。
「視界が暗くなる」「光がにじむ」「目の痛み」は即受診勧告。
今回も登録販売者ちゃんの、たった一言の聞き込みが視力の危機を救いました。
薬の知識と会話スキルがかけ合わさると、見えない危険を防ぐ力になります
まさに現場の神対応。
この件が無ければ、緑内障だと知らずに視力を失ってたかもしれないと思うと、怖いことだけど病院に行くきっかけとなってよかったですね。
心臓病?気にせず風邪薬のんでた爺さん編~登録販売者大活躍シリーズ①