服薬指導の現場で、患者さんからこんな相談を受けたことはないでしょうか。


飲んだ薬が、そのまま便に出てきた


ジェネリックにしたら、薬が溶けていない気がする

前回の記事では、
ゴーストピル(ゴーストタブレット)=薬の抜け殻
という現象について解説しました。

今回はその続編として、

医学雑誌・学術データベースに掲載された「実際のゴーストピルの写真」

を引用しながら、なぜ「薬がそのまま出てきた」と見えてしまうのかを、もう一歩踏み込んで解説します。

ゴーストピルとは何か(簡単におさらい)

ゴーストピルとは、

  • 徐放性製剤(CR、SRなど)において

  • 有効成分はすでに体内で溶出・吸収されている

  • しかし

  • 薬の外殻(溶出制御用の構造体)が消化されずに残り、便中に排泄される

という現象です。

患者さんの目には「錠剤の形がそのまま残っている」ように見えるため、不安や不信につながりやすいポイントでもあります。

実際のゴーストピルの写真(学術資料より)

ここでは、医学・学術分野で正式に公開されている写真を引用します。

① 医学雑誌掲載の写真

Wiley / Journal of General and Family Medicine

Ghost tablet in feces
(便中に排泄されたゴーストタブレット)

29歳の日本人女性が、便中に錠剤の残留物を発見し、当院を受診した(図 1 A)。この症例の2年前、患者は特発性肺動脈性肺高血圧症のため肺移植を受けていた。便中に発見された錠剤の残留物は、 患者に処方された 塩化カリウム錠(図1 B)と類似していた。エネルギー分散型X線分光法では、塩化カリウム錠から採取したサンプル中に高濃度のカリウム(図2 B、矢印)と塩素(図 2 B、矢頭)が確認されたが、便中に発見された錠剤の残留物(図 2 A)からはどちらの元素も検出されなかった。そのため、これらの残留物はゴーストタブレットと分類した。一般的に、塩化カリウム錠は服用後、長時間にわたって薬剤を徐放するように設計されている。しかし、これらの徐放錠は不溶性物質で構成されている場合があり、その後、便中に排泄される。これらは一般に「ゴーストタブレット」または「ゴーストピル」と呼ばれています。

出典:
Iwamuro M, et al.
Ghost tablet in feces.
Journal of General and Family Medicine.
Wiley Publishing.
(教育目的での引用)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jgf2.134?

この写真は、
医学雑誌 Journal of General and Family Medicine に掲載された症例報告の図版です。

  • 便そのものではなく

  • 排泄後に回収・洗浄された 錠剤の外殻 が撮影されています

  • 内部が空洞化しており、
    中身(有効成分)がすでに放出された後であること が視覚的に分かります

 

② PubMed Central 掲載の写真

PubMed Central(PMC)収載論文より

同様に、PubMed Central に全文公開されている論文にも、
ゴーストタブレットの写真が掲載されています。

 

67歳の男性と71歳の女性が、便中に豆粒大の成分が繰り返し排出されるという理由で受診しました。両患者とも胃腸の不調はなかったものの、腸内寄生虫感染を心配し、不安を感じていました。担当医は蠕虫感染を疑い、便中の成分の寄生虫学的検査を指示しました。

提出されたサンプルには、黄色から茶色の立方体構造物が含まれており、大きさは約2.5×1.0×1.0cm (図 1)。その柔らかな粘稠度と内部構造の欠如から、我々はこの非晶質要素が長時間作用型薬剤の残渣である、いわゆる「ゴースト タブレット」を表していると疑った。要請により、両患者は最近、徐放性(XR)メトホルミンを処方されていたことを確認した。

出典:
PubMed Central (PMC)
Ghost tablet in feces
(非営利・学術目的での引用)

https://www.bjid.org.br/en-ghost-tablets-mimicking-intestinal-parasite-articulo-S1413867019304726?

こちらも、

  • 徐放性製剤の外殻が

  • 形を保ったまま排泄された様子

を示したもので、
「薬が溶けていない」のではなく
「溶ける必要のない部分が残った」 ことがよく分かる資料です。

興味深いことは、寄生虫かもしれないと思って患者さんが受診したということです。

写真を見ると、なぜ誤解が生まれるかが分かる

実際の写真を見ると、

  • 錠剤の形がそのまま残っている

  • 「飲んだ薬が、そのまま出た」と感じても無理はない

と感じる方も多いと思います。

しかし、これは

  • 有効成分が溶けなかった証拠ではなく

  • 溶出制御のために設計された“殻”が残った結果

です。

これは製剤学的には 設計どおりの正常な挙動 です。

服薬指導で伝えておきたい一言

ゴーストピルが起こり得る薬を渡すときは、
次の一言があるだけで、患者さんの不安を大きく減らせます。


もし便の中に薬の形が残って見えても、
それは抜け殻で、成分はちゃんと体に吸収されています

昔の「溶けない薬」とは別の話


「粗悪なジェネリックは、そのまま出てくる」
という話を聞いたことがある方もいるかもしれません

しかし、今回のゴーストピルは、

  • 品質の問題

  • ジェネリックの問題

ではありません。

徐放性製剤という仕組みそのものによる現象です。

まとめ

  • ゴーストピルは 薬の抜け殻

  • 有効成分は すでに体内で溶出・吸収されている

  • 写真を見ると、患者さんが誤解しやすい理由がよく分かる

  • 学術資料を正しく引用すれば、服薬指導の強力な補助になる

前回の記事の
ゴーストピル一覧とあわせて、
服薬指導や新人教育の参考になれば幸いです。