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薬代より技術料が高いのはおかしい?|調剤薬局の本当のコスト構造とは

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Contents

はじめに

「昔は病院ですぐ薬がもらえたのに、今はわざわざ薬局に行かなきゃいけなくて不便!」
そんなふうに、まるで調剤薬局が“悪者”扱いされることがあります。

処方せんを医師が出し、それを薬剤師が調剤する――
このしくみ、いわゆる「医薬分業」という制度です。

正直なところ、自分自身も薬学生になるまでは、

医師と薬剤師のダブルチェックができる

病院ごとにバラバラな薬の情報を一元管理できる

そんな「お勉強的メリット」くらいしか思いつきませんでした。

若いころは(薬剤師のくせに)病院に直接薬を出してもらった方が楽でいいじゃん、と思っていたのです。

でも、国がここまで医薬分業をゴリゴリ推し進めた背景には、表ではなかなか語られない事情もあるんです。

今回の記事では、「ダブルチェックが大事!」とか「一元管理で安全!」といった優等生的な話はあえて置いておきます。

その裏にある、“今の空気感では言いづらいけど、実は国民が密かに恩恵を受けているメリット”について掘っていきましょう。

医薬分業の前って、どんな世界だった?

いまの30代以下の人たちには想像しづらいかもしれませんが、医薬分業が本格化したのは1990年代以降のこと。

それまでは、病院やクリニックで診察を受け、その場で薬をもらって帰る「院内処方」が一般的でした。

これだけ聞くと「昔は便利だったな〜」と思うかもしれません。

でも、ちょっと待ってください。
小規模な医院やクリニックに、果たして薬剤師は常駐していたのでしょうか?

答えはNO。
大きな病院なら薬剤師がいたケースもありますが、小さな医院では看護師や事務員が調剤していたのが実情です。

事務員が調剤?でも薬剤師法では…

実はこれ、法律上かなりグレーです。

薬剤師法第19条ではこう書かれています:

薬剤師でない者は、販売または授与の目的で調剤してはならない。
ただし、医師が自らの処方に基づいて自ら調剤する場合は除く。

つまり、「医師が自分で調剤する分にはOK」なんですが、事務のパートさんや看護師さんがやっていたとなると、建前上は「医師がやってることになってる」だけだった、というケースもあったわけです。

実際、院内で使う薬は種類も限られていて、「棚からこれとこれを取り出して袋に入れる」だけなら、薬剤師でなくてもできそうに思えるかもしれません。

でも、その中で取り違えやミスが本当になかったのか?
それを確かめる手段は、当時はありませんでした。

たとえ健康被害が出たとしても、「これは薬の副作用です」と医師が言えば、患者側はそれ以上の確認手段がなかったのです。

昭和の「なんとかなるさ」時代

しかも当時は、いまのような少子高齢社会ではありませんでした。

「これから高齢化が進むらしいぞ〜」とは言われていましたが、
社会全体がまだどこか楽観的で、「まあ、どうにかなるだろ」と流していた空気感がありました。

結果どうなったか?
…はい、見事に“どうにかならなかった”現在に我々はいます。

「医者からもらった薬がわかる本」って覚えてますか?

昔の本屋さんには、必ずと言っていいほど置いてありました。
『医者からもらった薬がわかる本(’88年度最新版)』。見覚えありませんか?

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今でもひっそりと棚の隅に並んでいるのを見かけますが、もうほとんど売れていません。
そりゃそうです。いまはネットで何でも検索できる時代ですから。

でも、売れなくなったのはネットのせいだけじゃありません。
そもそも昔は「自分が何の薬を飲んでいるか知らない」のが“普通”だったんです。

だからこのような本が書店に山積みされて結構売れていました。

わざと薬の名前を隠していた、あの時代

かつての院内処方では、患者が薬の名前を知らないように交付するのが一般的でした。

錠剤の包装(PTPシート)に印字されていた薬品名も、わざわざ「耳の部分をハサミでカット」して渡していたんです。(赤丸の部分)

そして、今のようにPTPシート1錠ずつに薬品名などは書かれていませんでした。

軟膏に至っては、チューブについていた品名ラベルを根元から“ピリッと”と切り取って、中身が何かわからないようにして渡していました。

ちょうど赤丸の部分に薬品名が書いた細長い紙がくっついていて、切り取り線で切れました。

切り取ると、何にも書いていない銀色のチューブだけになるようになっていました。

いまなら考えられない話ですよね。

「インフォームドコンセント?なにそれおいしいの?」
そんな時代でした。

幼いころもらっていた薬の記憶と、病院実習の時の昔の調剤の様子の説明を聞いて、記憶が合致した瞬間でした。

なぜ、名前を隠したのか?

理由は単純。
患者に薬の名前を知られると、副作用をネットで調べたりして不安になる可能性があるから。

「だったら最初から何も知らない方がいいでしょ?」という、
いわば“情報遮断による安心感”の提供だったわけです。

もちろん、今のように説明と同意を大切にする医療とは真逆のアプローチです。

適応外処方もこっそりと…

たとえば、「血液サラサラの薬」として使われていたバファリンA81mg
これが承認される前は、小児用バファリンを大人に処方していたことも。

患者から見たら「えっ、大人に子ども用の薬…?」となりますよね。
でも当時は名前を隠して出していたから、そんな疑問すら浮かばなかったのです。

もちろんこれは理にかなった処方なのですが、大人なのに小児用?といちいち聞いてくるうるさい奴らを防ぐための措置です。

だから売れた「医者からもらった薬がわかる本」

そんな中で登場したのがこの本。
薬の識別コード(錠剤に刻印された文字など)から薬の正体を割り出すという、まさに“薬の身元調査マニュアル”。

あの時代、これは革命的でした。

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『医者からもらった薬がわかる本』は、1985年に初版が発行されて以来、患者向けの「薬解説本の元祖」として多くの方々に支持され、途切れることなく改訂版を発行しつづけているロングセラー書籍です 。2022年には第33版が発行され、累計部数は260万部を超えています 。

この書籍は、医療用処方薬約13,000品目について、その効能・効果(適応症)、薬の位置づけ・効き方、使用上の注意(警告や禁忌)、副作用や飲み合わせの注意などをコンパクトにまとめています。また、健康保険での薬価(薬の値段)も先発品と後発品(ジェネリック)に分けて記載しており、薬をジェネリックにすることでどの程度安くなるかもわかります。その他、その薬の主要先進国での承認状況や、妊娠時に服用したときの危険性などもできる限り表示しています 。

このように、患者が自分の服用している薬について理解を深めるための情報を提供することで、医師や薬剤師とのコミュニケーションを円滑にし、より安全で効果的な薬物治療を支援することを目的としています。

なお、類似の書籍としては、1990年に発行された『薬の事典ピルブック』(ソシム)があり、こちらも患者が医師からもらった薬について調べるための情報を提供していました 。しかし、『医者からもらった薬がわかる本』は、その網羅性と継続的な改訂により、現在も多くの患者にとって信頼できる情報源として利用されています。

処方せんという「情報開示ツール」の登場

その後、国は「病院が薬を出すより、薬局に任せた方がコスト的にも合理的」という政策誘導を行い、医薬分業が一気に進みます。

処方せんが導入されると、薬の名前が明記されるようになりました。
つまり、情報を隠す時代から、情報を開示する時代へと移行したのです。

院外処方の意外なメリット

あるドクターがこう言っていました:

「薬剤師に見られると思うと、ヘンな処方せんは出せないよね」

考えてみれば、処方せんって医師の仕事の“設計図”みたいなものです。
外部にそれを公開するというのは、技術者が設計図を晒すようなもの。
だからこそ、変な手抜きはできません。

医薬分業は、医療の透明性と質を底上げする仕組みでもあるんです。

お薬手帳の変遷:無料→有料→無料(しかも持ってこないと損)

かつては「お薬手帳もらわないと安くなる」という逆インセンティブがありました。
いまは逆。持ってこないと高くなります。

元々、お薬手帳は一部の薬局が自主的に配っていたサービス。

それが東日本大震災を機に一気に普及します。
避難先でも薬の履歴が確認できるツールとして、国がその価値を認め、政策的に普及を推進したのです。

でもその後、国は「もう十分広まったでしょ」と判断して、薬局への報酬(点数)をカット

なんというか、制度普及後に報酬を打ち切る“政策的梯子外し”が行われたのです。

薬の名前は、もう“隠す”時代じゃない

いまでは、薬は1錠単位で名前が印字される時代です。
説明書(薬情)もついてくるし、調べようと思えばスマホ一発で情報が手に入る。

「隠すより、説明する方が信頼される」
ようやくそんな時代になったのです。

院内処方の“闇”に触れてみる

ここからは、当時の事情を“話半分で”聞いていただければと思います。

もちろん、大多数の医師は真面目にやっていたと信じています。
でも、中には「在庫処分・利益優先・隠蔽体質」な医療があったことも否定できません。

たとえば、こんな例も…

 

在庫処分: 新薬に切り替えたいけど、先に古い薬を在庫一掃!

薬価差益重視: 良い薬があるけど、儲かる安い薬の方を選択

抱き合わせ商法: 効く薬に加えて、意味ないビタミン剤もセットで出して“処方ボリューム”を確保 売上アップ

仕入れ重視: 本当はC薬がベストだけど、在庫があるB薬で代用

医療過誤隠し: 事務が間違った薬を渡した→「副作用が出た?この薬が合わなかったんですね〜」でしれっと処方変更

この辺は、昔営業をやっていた人が酔っ払った勢いでぶちまけてくれました(笑)

不正請求の余地も…

昔は院内で薬を出すから、何を出したか第三者が確認できない構造でした。

その気になれば、「出してない薬を出したことにして保険請求」なんてことも理論上は可能。

高い薬を出したことにして、別の薬を渡したり・・・

チェックする仕組みが全くなかったので、やろうと思えば何でもできてしまいます。

事務さんの首を切った際、内部告発でバレたケースもあると聞きます。
(額が大きいと仕入伝票まで調べられます)

院外処方の“建前”は処方のダブルチェック。でも実際は…

実のところ、医薬分業は「現場の不透明さ」を国が是正しようとした結果とも言えるのです。

今では、医師がどれだけ薬を出しても診療報酬は変わりません。
だから「薬を出しまくって儲ける」構造は成り立ちません。

処方のダブルチェックという優等生な回答のほかに、不正撲滅という大きな声では言えない目的がありました。

それでも昔は良かった?

病院は薬を出せば出すほど儲かった。
しかも、その薬を選ぶのも、渡すのも、記録するのも“全部お店(病院)側の裁量”でした。

考えてみてください。
「売る商品を自分で選べる店員」がいたら、どれだけ店が儲かるか。

そして、そんな“絶対権力”を持つ店があったら、製薬メーカーは…そりゃもう、頭が上がりません。

そこに癒着や賄賂が発生します。

MRも、上司から「医者の言うことは人殺し以外なんでも聞け」なんて激を飛ばされたとか・・・。

最後に|その闇を知って、いまを考える

もし、昔を知る問屋さんや元MR(製薬営業)が近くにいたら、ぜひ聞いてみてください。
「昔はねぇ…」と口を開いたとき、思わぬ“裏話”が飛び出すかもしれません。

私たち薬剤師が果たすべき役割は、「ただ薬を渡すこと」じゃない。
過去の仕組みが抱えていた問題を知ることで、医薬分業の本質や、自分たちの立ち位置も見えてくるのではないでしょうか。

いまの「院内処方」は、昔と同じなのか?

ここまで「かつての院内処方がいかに不透明だったか」を見てきました。
では、現在も院内処方を行っている医療機関は“ダメ”なのか?

一概に善し悪しの判断はできません。
時代は変わり、制度も変わりました。昔のような“薬出せば出すほど儲かる”構造は、すでに存在しません。

利益構造は激変している

今の医療機関では、薬を出しても以前のような利益は得られません。
たとえばかつては、「薬九層倍(くすりきゅうそうばい)」なんて言葉がありました。
要は、仕入れた薬の原価に対して9倍もの利益が乗せられたという伝説的な時代。

しかし今はというと、薬の利益率は良くて10%程度、場合によっては逆ザヤもあります

100円で仕入れた薬を95円で出さなければならないケースも・・・。

薬価の引き下げが繰り返され、薬で儲ける時代はとうに終わっているのです。

「薬局がもうけすぎ」と言われる誤解

ここで少し脱線します。

よく「調剤薬局は技術料でボロ儲けしている」といった批判を目にします。
実際、現代ビジネスの記事(2018年11月)でも、以下のような指摘がされています。

風邪で薬を処方された際、薬そのものの代金(薬剤料)が710円でも、調剤技術料410円、薬歴管理料410円が加わり、合計で薬代以上の技術料がかかっている。しかも処方せん料を病院に支払うと、トータルでは院内処方の2倍以上になることも珍しくない

——つまり「患者の無知に付け込んで、薬局が儲けている」といった批判が出てくるわけです。
出典:現代ビジネス

でも、それって本当に「不当な利益」なんでしょうか?

確かに、薬剤料よりも技術料・管理料のほうが高く見えることはあります。
でも、この「技術料」って、単なる“手数料”じゃないんです。

処方せんチェック
重複投与や禁忌、相互作用の確認。これは医療事故を未然に防ぐ大事な仕事。

調剤作業
錠数を数えるだけじゃない。粉薬やシロップ、軟膏の混合、一包化など、時間と神経を使う作業が山ほど。

単純な袋詰め
処方箋に合わせて薬を小分けしているのでそのままではどうやって飲んだらいいかなどがわかりません。
飲み方を印刷して袋に入れてます。
たったこれだけでも、間違ったら大問題のストレスフルな仕事です。

処方箋に書かれた通り、はいっ!ってじゃらじゃら渡すだけなら楽ちんです。

薬歴の記録管理
過去の処方や副作用の履歴を記録し、次回の処方ミスを防ぐ。

服薬指導
飲み合わせ・副作用・生活習慣に合わせた説明やアドバイスも、薬剤師の重要な仕事。

言ってしまえばこれは、「薬を正しく・安全に届けるためのインフラコスト」なんです。

風邪薬で薬剤料が710円、技術料が820円。
「薬より手数料の方が高いじゃん」と思いましたか?

でも、その薬剤料710円って、ほぼ“仕入れ値”です。
薬価差益なんて、いまはもうほぼありません。

710円で仕入れて、710円で売れとか言ってませんよね?

それもはや慈善事業や金持ちの道楽です。

薬局の利益率で言えば50%程度。これは恵まれたケースです。
問題は――

たとえば、冷蔵管理が必要な新薬。

温度管理ができる冷蔵庫も1台20万~30万円します。

薬代は1人の処方で数万から数十万円するものもあります。

それを冷蔵庫で管理して、処方箋が来たらすぐ出せるようにしておく必要があります。

でも薬局が得られる利益は、風邪薬と同じ820円前後。

え?ってなりますよね。

冷蔵庫が壊れたら30万円がパー

患者が別の薬局に行ったら、ただの在庫ロス

返品不可・廃棄のリスクも

 

そこまでいかないにしても、1錠数百円する薬何なんてゴロゴロあります。

花粉症の目薬↓いくらだと思う?

一本2000円以上します。

10本入りで20000円。

でも高いからと取り寄せ対応にしたら、すぐ使いたい患者さんは困ります。

それでも「儲けすぎ」と言われる。
この商売、やりたいと思いますか?

医師や歯科医師と違い、薬剤師で個人で開業する割合が少ないのは、薬局開業はかなりリスキーだからです。

薬局は、ただ「薬を渡す窓口」じゃありません。
むしろ、「裏で爆弾(高額在庫)を抱えながら、患者のために備え続けている」現場です。

技術料・管理料は、その覚悟と責任の代償でもあるのです。

 

医療は“製品”ではなく“サービス”

スーパーの買い物とは違い、医療には「専門知識」と「責任」がついてきます。

(もちろんスーパーも、食品の安全、衛生管理などがコストとして乗っています。)

薬局の世界では、
「処方箋どおりに出せばいい」ではなく、
「処方箋が適切かを見極める」ことすら求められます。

スーパーで言えば、今晩のおかずはすき焼きですか。家計大丈夫ですか?カレーにしませんか?みたいな。

冗談はさておき、

調剤薬局が儲けているように見えるのは、構造上「対物報酬」に偏っていた制度の名残です。
実際、ここ数年の診療報酬改定では、薬そのものではなく“対人業務”への評価にシフトしてきています。

仕入れても売れない「薬局の在庫リスク」もすぐ対応するサービスの一環

調剤薬局は、仕入れても処方箋が来なければ売れない商売です。
薬は「売れ残ったから値下げして処分」とはいきません。
期限切れになれば廃棄。患者に合わせて仕入れた薬が使われなければ赤字まっしぐらです。

にもかかわらず、「在庫の不安なく新薬を処方できる環境」を守るために薬局が在庫を抱えているという現実もあるのです。

期限切れ弁当を食べて生活できるコンビニのロスとはわけが違います。

「儲かっているように見える」けれど

批判の声は、調剤報酬の仕組みを知るきっかけになります。
ただし、その声が正確かどうかを見極めるには、背景にある構造や責任の重さまで知る必要があります。

風邪薬で薬剤料が710円、技術料が820円。
「薬より手数料の方が高いじゃん」

全てがこれなら、全薬剤師みんな個人で薬局やってます。

調剤薬局が果たしているのは「販売業」ではなく、医療行為の一部としての専門業務
その点を理解してもらえれば、「なんで技術料が高いの?」という疑問も少しずつ解けてくるかもしれません。

 

他の業界の原価率と比べても、調剤薬局だけが原価率が低くてべらぼうに設けているとは言い難いです。

業界名原価率(%)の目安備考
調剤薬局約65%薬剤は返品不可・在庫ロスリスクあり/薬価基準で仕入価格固定・販売価格も統一
ドラッグストア(OTC含む)約75%医薬品・日用品・食品など低粗利商品が多い
アパレル(ファッション小売)約20~30%商品の定価が高く、セール時も利益あり/在庫リスクが高いが値下げ、接客で消化可能
コンビニエンスストア約70~75%食品中心のため高原価/フランチャイズ料・人件費も重い
外食産業(飲食店)約30~40%食材原価に加え、人件費・店舗維持費が大きな負担
本屋・書店約75~80%書籍の仕入価格が定価の70~80%/返品可能だが在庫回転率が低い
家電量販店約80~90%利益率は非常に低いが、高額商品で回転させてカバー
スーパーマーケット約70~75%食品中心/価格競争が激しく、粗利が非常に薄い
百貨店約60~65%ブランド委託・テナント収入あり/在庫リスクは店舗により分散
ネット通販(EC)約40~60%商材により大きく変動/物流コストや返品率に注意

 

つまり、薬局は“普通の商売”として見たとき、そこまで利益率が高いわけではないのです。

 

(調剤薬局の「儲けスギ」な例もある、という補足)

もちろん、すべての薬局がリスクを背負って薄利で運営しているわけではありません。
今では数は減ってきたものの、一部には“利益率が非常に高くなりがちな薬局”も存在します

たとえば──

整形外科の門前で、湿布やロキソニンを大量に処方される薬局

眼科の隣で、目薬中心に処方が回転する薬局

これらの薬局では、調剤業務が比較的シンプルなうえに、処方内容が定型的で回転率が高く、業務効率が非常に良いという特徴があります。
調剤料や技術料が同じであれば、作業負荷の少ない処方が多いほど利益が出やすくなる構造は確かに存在します。

とはいえ、こうした“儲かる構造”は限られた条件でのみ成立し、全国すべての薬局がそうした恩恵を受けているわけではありません。

むしろ、在宅医療や対人業務が求められる今の時代においては、薬局の収益構造は以前ほど単純ではないのが実情です。

売れない薬も仕入れる、自ら販促できない。それが薬局の宿命

繰り返しになります。
薬局は、処方箋が来なければ薬は売れないということ。

医師が新しい薬を処方する
→ 処方箋が来るたびに薬局が新薬を仕入れる
→ 患者に不評で処方中止
薬局、在庫抱えて沈黙…

医薬品は食品と違って「安く売ればいい」わけにも、「自分で使えばいい」わけにもいきません。
売れなかったら“期限切れ廃棄”一直線です。

このリスクの存在は、あまり知られていません。

そして最後に

ここまで、院内処方の問題点や、それに対して国が進めた医薬分業の裏事情を掘ってきました。

重要なのは、制度そのものの“意図”と“構造”を理解することです。