1. 自家調剤とは
自家調剤とは、薬剤師本人やその家族のために、自分が勤務または経営する薬局で調剤することを指します。
外見は通常の処方箋と変わらず、レセプトも同じため、個別指導では自己申告を求められます。
2. 薬学管理料算定NGの公式な理由
(1) 社会的使命・職業倫理の観点
保険薬剤師には、保険制度の公正性・信頼性を守る社会的使命があります。
自家調剤で薬学管理料を算定すると、「自分のために自分で保険請求している」構図となり、社会通念上、適切と理解されにくい請求になります。
東京都薬剤師国保組合は「社会通念に照らして理解される調剤報酬の請求」を求め、算定の自粛を強く要請しています【東京都薬剤師国保組合 PDF】。
(2) 客観性の欠如
薬学管理料は、服薬指導や服薬状況の確認が行われた場合に算定できますが、患者=薬剤師本人または家族の場合、指導の客観性を第三者が担保することが困難です。
(3) 制度の健全性確保
保険者の運用方針では、財政的な負担軽減よりも、制度の信頼性を保つために自家調剤での算定を抑制する意図が強く示されています。
東京都薬剤師国保組合は、組合員1人あたりの調剤費を抑え、制度の持続性に寄与しているデータも公表しています【給付費資料 PDF】。
3. 保険者による具体的な制限事例
4. 個別指導での扱い
個別指導の冒頭で「自家調剤はありますか?」と必ず聞かれ、
「はい」と答えると「薬学管理料などは算定していませんね?」と確認されます。算定していた場合は、ほぼ確実に返還+改善指導の対象になります。
5. 実務での安全策
原則、自家調剤では薬学管理料を算定しない
家族分は別店舗や他薬局で調剤し、通常通り算定
社内規程で方針を明文化し、勤務薬剤師にも周知
まとめ
自家調剤で薬学管理料を算定しないのは、「財政削減」よりも職業倫理と社会的信頼の維持が主な理由です。
法令に明文化された禁止ではないものの、保険者の公式運用に沿った判断が、現場と経営を守ります。