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「とりあえずカロナール、トランサミン、ムコダインで様子見ましょう」
──はい、出ました。
薬剤師誰もが見たことあるテンプレ処方。
患者さんは元気に来局。
もはや“受診記念品”みたいな扱いになってます。
- 「肩が痛い」→「とりあえずロキソニンテープ」
- 「熱出た」→「とりあえずカロナール」
- 「咽がイガイガ・痰がからむ」→「とりあえずムコダイン+イソジン」
もうね、「とりあえず処方」って、処方箋の形をした安心グッズなんですよ。
患者も欲しがるし、医師も出しときゃクレームにならんし、
薬局も「まぁ点数になるし…」ってノリで受け取る。
医療費削減したい?じゃあまずこれから削ればいいじゃん?
「財政が厳しい!」
「高齢化社会に備えて持続可能な医療を!」
そう主張する政治家や政策担当者のみなさん。
だったら“使われてるけど、なくても困らない薬”を整理すればいい。
誰も損しないし、医療費もスッキリ。
でもね、なぜかそこには誰も触れない。
なぜ触れないのか?みんな得してるから。
だってさ。
立場 | 心の声 |
---|---|
医師 | 「点数もらえるし、患者も納得するし、簡単だし」 |
薬局経営者 | 「湿布もらいにくる人が一番利益率いいんだよね」 |
勤務薬剤師 | 「ロキソニンテープなら間違いも少ないし、薬歴も書きやすい」 |
患者 | 「薬もらった方がなんか安心。診察料だけで薬なしだと損した気分」 |
つまり、「いらない薬」が実は全員にとってちょっとずつお得なんです。
逆に言えば、誰も本気で削減したくない。
でも、削らなきゃいけない空気が出てきた
とはいえ、財政が限界なのは事実。
さすがにどこかで削らないといけない。
そこで登場するのが、あの議論。
「OTCと同じ薬は、もう保険で出さなくていいよね?」論
花粉症のアレグラ、胃薬のファモチジン、湿布、うがい薬、
「これ、市販でも買えるし、保険で出すのやめようか」っていう話。
──一見正論っぽい。けど、話が雑すぎません?
がん患者の便秘薬まで保険外にしたら、どうなる?
たとえば、がん治療の副作用で便秘薬・制吐剤・胃薬・鎮痛薬が必要な人に、
「その薬、OTCにもあるんで自費で買ってください」って言うの?
それ、治療の一部でしょ。サポートじゃなくて、もはや本体の一部でしょ。
その議論、わざと泥沼化させてますよね?
ここがポイントなんです。
「とりあえず処方を削る」っていう合理的で反論しづらい話が出てくると、医師会も薬剤師会も「やばい、それ言われると反論できない…」ってなる。
そこでどうするか?
わざと線引きが難しい“OTC類似薬の保険外し”という地雷原に話を持ち込む。
結果:「この線引きは難しいね」で何も決まらない
花粉症薬は?湿布は?
慢性疼痛の人は?がん患者は?子どもは?貧困家庭は?
どこからが医療で、どこからがセルフケアか?
どうせ答えなんて出ません。
で、気づいたら年度末になって、「今回は見送りになりました」でフィニッシュ。
本当に削るべきは、“何も考えずに出された処方箋”
制度的に削るべきなのは、「治療方針としての処方」じゃなくて、
“とりあえず何か出しとくか”っていう処方なんですよ。
でも、それを削ろうとすると、医師も薬剤師もちょっと痛い。
だから誰も言わない。
代わりに、泥沼の議論に持ち込んで時間を潰す。
最後に、勤務薬剤師のひとこと
「とりあえず処方」がダメなのは、みんなわかってる。
でも、それが現場にとって一番ラクで、リスクが少なくて、怒られない選択肢なんだよ。
「とりあえず処方がなくなった世界」では、薬剤師も医師も、“出す意味がある薬”にちゃんと時間と労力を使わなきゃいけない。
取り合えずロキソニンテープだけでチャリンチャリンとお金が入らない。
医師の処方箋発行料、薬剤師の調剤料が減って地味に効いてくる。
地味に効くから医療費削減になる。
やっぱやめたくないよね~。
だからこの議論、何も決まらずに終わるんですよ。