加味逍遙散だけじゃない|山梔子(サンシシ)を含む漢方13製剤一覧と腸間膜静脈硬化症を薬剤師が解説

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山梔子(サンシシ)が話題ですが、加味逍遙散だけではありません

最近、X(旧Twitter)では、
「加味逍遙散を飲んでいるけど大丈夫?」
という投稿を見かけるようになりました。
きっかけは、
山梔子(サンシシ)を長期間服用すると、まれに腸間膜静脈硬化症との関連が報告されている
という情報が広まったことです。
確かに加味逍遙散は、婦人科を中心によく処方される漢方薬です。
しかし、
山梔子を含む漢方は加味逍遙散だけではありません。
実際には、ツムラ医療用漢方製剤だけでも13製剤あります。
薬局で働いていると、
「この漢方は長期間処方されることが多いな」
というものも自然と見えてきます。
この記事では、
- 山梔子とはどんな生薬なのか
- 山梔子を含む漢方13製剤一覧
- 長期服用で注意したい理由
- 薬剤師として感じる「長期処方されやすい漢方」
について、現場目線も交えながら解説します。
まずは山梔子(サンシシ)を含むツムラ漢方13製剤一覧
まずは一覧をご覧ください。
(AIにより作成、帯などが若干実物と違います。)

※画像はツムラ医療用漢方エキス顆粒(分包)の分包デザインです。
一覧を見ると分かるように、
話題になっている加味逍遙散(24番)だけではありません。
ダイエット目的で知られる防風通聖散(62番)、
咳や痰で高齢者に長期処方されることも多い清肺湯(90番)、
慢性副鼻腔炎で使われる辛夷清肺湯(104番)など、
比較的長期間服用されることのある漢方も含まれています。
つまり、
「山梔子=加味逍遙散」
というイメージだけでは少し不十分なのです。
次は、
「山梔子とはどんな生薬なのか?」
そして、
なぜ腸間膜静脈硬化症との関連が問題になっているのか
について、添付文書やPMDAの情報をもとに詳しく解説します。
ここからは、「山梔子=危険な生薬」という誤解を避けながら、なぜ問題になっているのかを医学的に解説します。
山梔子(サンシシ)とは?
山梔子(サンシシ)は、アカネ科クチナシの成熟果実を乾燥させた生薬です。
漢方では古くから使われており、
- 炎症を抑える(清熱)
- のぼせを改善する
- 出血傾向を改善する
- イライラや不眠を和らげる
などを目的として、多くの漢方薬に配合されています。
特に、
- 黄連解毒湯
- 加味逍遙散
- 防風通聖散
などの代表的な漢方にも配合されており、決して珍しい生薬ではありません。
つまり、
「山梔子が入っている=危険な漢方」
というわけではありません。
問題になっているのは、
「長期間服用した場合」
です。
なぜ腸間膜静脈硬化症が話題になったの?
近年、
山梔子を含む漢方薬を長期間服用していた患者さんで、
腸間膜静脈硬化症
との関連が報告されるようになりました。
腸間膜静脈硬化症とは、
大腸へ血液を送る静脈が徐々に硬くなり、
血流障害を起こす病気です。
初期は、
- 腹痛
- 下痢
- 便秘
- お腹の張り
など、比較的ありふれた症状から始まることがあります。
進行すると、
- 腸閉塞
- 腸管壊死
など重症化し、手術が必要になるケースも報告されています。
ただし、
非常にまれな副作用です。
ほとんどの人が発症するわけではありません。
そのため、
必要以上に怖がる必要はありませんが、
長期間服用している方は知っておいた方がよい情報
と言えるでしょう。
「5年以上」が一つの目安と言われる理由
報告例をまとめた全国調査では、
腸間膜静脈硬化症を発症した患者さんの
平均服用期間は13.6年
でした。
また、
多くの症例で5年以上の長期服用歴
が確認されています。
そのため、
現在の添付文書では、
長期間服用する場合は、
定期的なCTや大腸内視鏡検査などを行うことが望ましい
とされています。
ここで注意したいのは、
「5年以上飲んだら必ず発症する」
という意味ではないことです。
あくまでも、
長期間服用例で報告が多かったため、
注意喚起が行われているという位置付けです。
漢方だから安全とは限らない
漢方薬は、
「自然のものだから安心」
というイメージを持たれがちです。
もちろん、
多くの患者さんにとって有用な治療法であり、
長年の使用実績があります。
しかし、
漢方薬も医薬品です。
西洋薬と同じように、
効果があれば副作用もあります。
今回話題になっている山梔子も、
まさにその一例です。
大切なのは、
「危険だから飲まない」ではなく、必要性を定期的に見直しながら適切に使うことです。
次の章
「薬局で見えてくる、長期処方されやすい山梔子含有漢方」
では、13製剤を薬剤師の現場目線で、
- 長期処方されやすい漢方
- 比較的短期間で終了することが多い漢方
- 特に気になっている防風通聖散
について解説します。
薬局で見えてくる「長期処方されやすい」山梔子含有漢方

ここからは、
薬剤師として働いていて感じる、
「長期間処方されることが多い漢方」
についてお話しします。
もちろん、
地域や診療科によって違いがあります。
あくまでも、
私がこれまで勤務してきた薬局で感じた印象です。
加味逍遙散(24番)

これは今回もっとも話題になっている漢方です。
更年期障害。
月経不順。
イライラ。
自律神経症状。
こうした症状は数週間で治るものではありません。
そのため、
数年単位で服用している患者さんも珍しくありません。
長期処方という意味では、
今回話題になったのも納得できる漢方です。
清肺湯(90番)

意外と見落とされがちですが、
私が気になるのはこちらです。
高齢者で、
咳や痰が慢性的に続く患者さん。
「これを飲んでいると調子がいい。」
という理由で、
何年も続いているケースがあります。
必要性があって継続されている印象が強く、
漫然投与というより、
症状コントロールのために続いている処方が多いように感じます。
辛夷清肺湯(104番)

慢性副鼻腔炎。
蓄膿症。
耳鼻科では比較的長く処方されることがあります。
こちらも体質改善を目的として、
数か月から1年以上続くケースがあります。
防風通聖散(62番)

そして、
私が一番気になっているのが、
防風通聖散です。
もちろん、
肥満症に適応がある医療用医薬品です。
必要な患者さんもたくさんいます。
ただ、
薬局で見ていると、
他の漢方とは少し雰囲気が違います。

「痩せたいから続けたい。」
「体重が増えてきたから続けたい。」
そんな理由で、
何年も処方されているように見えるケースがあります。
もちろん、
本当に効果を感じている患者さんもいるでしょう。
一方で、
薬剤師として、
「今も本当に必要なのかな?」
と感じることがあるのも事実です。
実際、
親しい患者さんから、
「これ効いてると思う?」
と聞かれることがあります。
そんなときは、
「ご自身ではどう感じていますか?」
と聞き返します。
すると、
「うーん……。」
という反応が返ってくることも少なくありません。
これは私の勤務経験での話ですが、
「防風通聖散だけで大きく痩せました。」
という声は、
正直、一度も聞いたことがありません。
もちろん、
これは「効かない」という意味ではありません。
効果がある方もいます。
ただ、
何年も飲み続けるのであれば、
一度くらいは、
「今も続ける理由があるのか。」
を見直してもよいのではないかと思っています。
実は、
このあと説明する保険診療の仕組みも、
こうした長期服用に少なからず影響しているのではないかと感じています。
保険診療だからこそ、長期服用になりやすい面もある

ここで少し考えてみたいことがあります。
もし、
防風通聖散をドラッグストアで買うとしたらどうでしょう。
ナイシトールなどの市販薬は、
1か月分でも数千円します。
飲んでみて、
「思ったほど変わらないな。」
そう感じたら、
購入をやめる人も少なくないでしょう。
一方、
医療用の防風通聖散はどうでしょうか。
薬価は、
13.8円/g。
通常量である7.5gを30日分処方すると、
薬価は約3,105円です。
3割負担なら、
患者さんの自己負担は約930円。
もちろん、
調剤基本料などもあるため、
実際の支払額はもう少し高くなります。
それでも、
「防風通聖散だけ」の自己負担として考えると、
決して高額ではありません。
だから、
いつもの
- 血圧の薬
- コレステロールの薬
- 糖尿病の薬
そこへ防風通聖散が追加されても、
「1か月1,000円くらいなら続けようかな。」
そんな心理になる患者さんがいても不思議ではありません。
さらに、
漢方には、
「自然のものだから体に優しそう。」
「長く飲んでも安全そう。」
というイメージもあります。
もちろん、
漢方薬は多くの患者さんに役立っている優れた治療薬です。
しかし、
“漢方だから長期間飲んでも大丈夫”
という意味ではありません。
今回話題になっている山梔子による腸間膜静脈硬化症も、
まさに長期間服用との関連が指摘されている副作用です。
私は、
防風通聖散が悪いと言いたいわけではありません。
必要な患者さんには、
今後も重要な治療薬です。
ただ、
「昔から飲んでいるから。」
「安いから。」
「なんとなく続いているから。」
そんな理由だけで続いているのであれば、
一度、
“今の自分にも本当に必要なのか。”
を主治医や薬剤師と一緒に見直してみてもいいのではないでしょうか。
薬には、
飲み始める理由があります。
そして、
それと同じくらい、
飲み続ける理由も大切だと私は思っています。
## 山梔子を含むツムラ漢方13製剤一覧
今回紹介した山梔子(サンシシ)を含むツムラ医療用漢方製剤をまとめると、以下の13製剤です。

| ツムラ番号 | 製品名 | 長期処方される印象※ |
|---|---|---|
| 15 | 黄連解毒湯 | ★★☆☆☆ |
| 24 | 加味逍遙散 | ★★★★★ |
| 50 | 荊芥連翹湯 | ★★☆☆☆ |
| 56 | 五淋散 | ★★☆☆☆ |
| 57 | 温清飲 | ★★★☆☆ |
| 58 | 清上防風湯 | ★★☆☆☆ |
| 62 | 防風通聖散 | ★★★★☆ |
| 76 | 竜胆瀉肝湯 | ★★★☆☆ |
| 80 | 柴胡清肝湯 | ★★☆☆☆ |
| 90 | 清肺湯 | ★★★★★ |
| 104 | 辛夷清肺湯 | ★★★★☆ |
| 135 | 茵蔯蒿湯 | ★☆☆☆☆ |
| 137 | 加味帰脾湯 | ★★★☆☆ |
※長期処方される印象は、筆者が調剤薬局で勤務する中で感じたものであり、診療科や地域、患者さんの病態によって異なります。
| ツムラ番号 | 製品名 | 主な診療科 | 長期処方される印象 | 長期になりやすい理由 |
|---|---|---|---|---|
| 24 | 加味逍遙散 | 婦人科・精神科・内科 | ★★★★★ | 更年期障害や自律神経症状が慢性化しやすい |
| 62 | 防風通聖散 | 内科・糖尿病内科 | ★★★★☆ | 肥満改善目的で継続されやすい |
| 90 | 清肺湯 | 呼吸器内科・内科 | ★★★★★ | 慢性の咳・痰に使用されることが多い |
| 104 | 辛夷清肺湯 | 耳鼻咽喉科 | ★★★★☆ | 慢性副鼻腔炎で長期間使用されることがある |
※長期処方される印象は、筆者が薬局で勤務する中で感じたものであり、診療科や地域、患者さんの病態によって異なります。
自己判断で中止する必要はありません
ここまで読むと、
「山梔子が入っているなら飲まない方がいいの?」
と思われるかもしれません。
しかし、
そのような意味ではありません。
腸間膜静脈硬化症は、
非常にまれな副作用です。
一方で、
加味逍遙散や清肺湯などによって症状が改善し、生活の質が向上している患者さんも数多くいます。
大切なのは、
必要な薬を、必要な期間、適切に使うこと。
そして、
長期間服用している場合には、
「今も続ける必要があるか。」
という視点を、定期的に確認することです。
このような症状があれば早めに相談を
山梔子を含む漢方を長期間服用している方で、
次のような症状が続く場合は、
自己判断せず、処方医へ相談してください。
- 腹痛を繰り返す
- 下痢や便秘を繰り返す
- お腹が張る
- 血便が出た
- 原因不明の消化器症状が続く
もちろん、
これらの症状だけで腸間膜静脈硬化症とは限りません。
多くは別の病気ですが、
長期服用歴があることは診断の参考になります。
薬剤師からひとこと

今回、Xでは、
「加味逍遙散は大丈夫?」
という話題が中心になっていました。
でも、
薬局で毎日処方箋を見ていると、
気になるのは加味逍遙散だけではありません。
むしろ、
長期間処方されやすい防風通聖散や清肺湯も含め、
「今も本当に続ける理由があるのか。」
という視点は、とても大切だと思っています。
薬には、
飲み始める理由があります。
そして、
飲み続ける理由もあります。
今回話題になった山梔子は、
そのことを改めて考えるきっかけになった出来事でした。
必要以上に怖がる必要はありません。
だからこそ、
漫然と続けるのでもなく、必要だから続ける。
そんな服薬が理想なのではないでしょうか。
















