「心臓病だけど、使って大丈夫だよね?」

ある日のドラッグストア。
レジ前で、常連のおじいちゃんが風邪薬を手に持って聞いてきました。
箱にはしっかり 「心臓病の方は使用前に相談」 の注意書き。
しかも成分はプソイドエフェドリン入り。
登録販売者ちゃんは、やんわりと説明します。
するとおじいちゃん、笑いながらこう返してきました。
そこで切り返し!
普通なら「そうですか…」で流れてしまう場面。
でも登録販売者ちゃんは一歩踏み込みます。
一瞬、おじいちゃんの表情が変わります。
グッジョブ! 登録販売者ちゃん
この瞬間、本人の中で「薬と症状が結びつく」という気づきが生まれました。
説明だけでなく、自分の体験と結びつけて理解してもらうことで、初めて納得してもらえるケースって多いんです。
その日はおじいちゃん、プソイドエフェドリンを含まない代替薬を選んで帰りました。
ちょっとした会話の工夫で、副作用の芽を未然に摘んだ好例です。
なぜ「心臓病の方は相談してください」なのか
心不全や狭心症、不整脈、重度の高血圧などがある場合、交感神経刺激作用で症状が悪化するリスクがあります。
β遮断薬など心疾患治療薬との相互作用で効果が打ち消される、または副作用が強まる可能性があります。
高齢者や既往歴がある方は特に、血圧や脈拍の変動が予想外に大きくなることがあります。
表示の根拠
日本の市販薬(OTC)添付文書の「使用上の注意」(厚生労働省のガイドライン準拠)には、
次の診断を受けた人は使用前に医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
心臓病、高血圧、糖尿病、甲状腺機能障害… など
と明記されています。
これは、万が一の副作用を避けるための義務表示であり、メーカー独自の判断ではなく制度上の必須記載です。
実務的な注意ポイント(薬剤師目線)
心疾患の既往がある方には、原則としてプソイドエフェドリン・塩酸エフェドリン配合薬は第一選択にしない。
鼻づまりや咳止めなど、代替可能な成分(例:点鼻の生理食塩水、鎮咳成分のデキストロメトルファン単剤など)を検討する。
「昔から飲んでいるから大丈夫」と言われても、加齢や病状変化でリスクが上がっていることがあるため再確認が必要。