ある日の午前中。
常連のおじいちゃんが、なんとも言えない不安そうな顔でやって来ました。
「あのさ、この前ここで風邪薬もらったんだけど…飲んだ翌日から、しょん便が出なくなっちゃって」
よく聞けば、トイレに行っても出にくい・切れが悪い・残尿感が強い──いわゆる尿閉の症状。
そして、おじいちゃんには既往歴がありました。
前立腺肥大症と抗コリン作用
登録販売者ちゃんはすぐに成分をチェック。
その風邪薬には、抗コリン作用を持つ成分(例:クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンなど)がしっかり入っています。
抗コリン作用は膀胱の収縮を抑え、尿道の抵抗を増す作用があります。
前立腺肥大症のある男性はもともと尿道が狭くなっているため、この作用で尿閉が悪化することがあります。
症状が進むと、膀胱がパンパンに張って腹痛や腎臓への負担まで引き起こす危険も。
聞き込みスタート

「前立腺の薬は飲まれていますか?」
「ああ、病院で前立腺肥大って言われてるよ。薬ももらってる」
やはり既往歴あり。
購入した風邪薬のパッケージを見返すと、風邪薬は抗コリン成分入りの総合感冒薬。
これが今回の症状悪化の原因と考えられました。
危険信号と即対応
登録販売者ちゃんは落ち着いて説明します。
「この成分は前立腺肥大の方には尿が出にくくなる副作用があるんです。今の症状が続くと危ないので、すぐ泌尿器科に行ってください」
おじいちゃんは少し驚き、
「そうか…風邪薬でこんなことになるとは思わなかったよ」
とその足で受診へ。
後日、
「早めに来てよかったって先生に言われたよ」
とお礼を言われました。
このケースの教訓
前立腺肥大のある患者には抗コリン成分入り総合感冒薬は避ける。
尿閉症状が出た場合は、即時中止+医療機関受診を勧める。
購入前に「排尿に関する持病があるか」を聞くことで予防できる。
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