自家調剤と薬学管理料の誤解が引き起こした職場の嵐
(全てありがちな仮名です)
1. 噂の火種はベテラン事務のひと言
「ねえ、あの新人ちゃん…なんで自分の薬、薬学管理料を付けてないの?」
レセプトチェック中のベテラン事務員・田中さん(仮名)は、眉をひそめた。
彼女は〇〇年のベテランで、自分の薬はしっかり管理料を算定されている。
そんな田中さんから見ると、かわいい新人薬剤師・美咲ちゃん(仮名)が管理料を付けないのは、どうにも不思議だった。
そして火に油を注ぐ“管理薬剤師”の動き・・・。
さらに気になったのは、管理薬剤師の山本さん(仮名)。
自分の薬も家族の薬までも、やっぱり薬学管理料を算定していない。
事務の私から見れば、
「あんたたち、会社の売上減らして、自分の負担を減らしてるだけじゃないの?」
という構図にしか見えない。
2. 管理薬剤師の判断
そんな事務員さんのモヤモヤをしらない、管理薬剤師の山本さん(仮名)。
「自家調剤では薬学管理料を算定しない」という保険者ルールを理解し、新人の美咲ちゃんにも「これが正しいやり方だよ」と教えていたのだ。
制度に忠実に、真面目に――それが山本さんの信条だった。
3. 経営者へのチクリ

しかし、田中さんはそんな理由は知らない。
「会社の売上を減らしてまで、自分の負担を下げるなんて…不正じゃないの?」
そう管理薬剤師の山本さんに聞くも、「制度上問題ないですよ」と軽く流され・・・
ついに経営者・佐藤社長(仮名)にチクり。
「新人も管理薬剤師もグルになって変なことしてる!」
その一言が、職場の空気を一変させた。
経営者薬剤師も“まさか”の無知
経営者である薬剤師の佐藤さん(仮名)は、自家調剤と薬学管理料のルールなんて聞いたことがない。
事務さんの報告を聞いて血相を変え、
「それは不正請求だ!すぐに調べる!」
と大騒ぎ。
4. 経営者の暴走
自家調剤のルールを知らない佐藤社長は、即座に「これは不正請求だ!」と断定。
その場で薬局の全員を集めて事情聴取を開始。
山本さんは「保険者の公式な方針に従っている」と説明するが、「そんな話は聞いたことがない」と社長は取り合わない。
新人の美咲ちゃんも、「山本先生がそう教えてくれたんです…」と涙目だ。
5. 四面楚歌の管理薬剤師

気づけば、山本さんは経営者からも事務からも「会社の利益を損ねた張本人」として疑われ、社内で孤立していった。
正しいことをしたつもりが、制度を知らない周囲にはまったく理解されない・・・。
まさに四面楚歌。
6. 事態の収束と教訓
後日、薬剤師会に問い合わせ、「自家調剤では薬学管理料を算定しないことが望ましい」という見解が届き、山本さんの判断が正しかったことが判明。
しかし、一度こじれた人間関係は簡単には元に戻らなかった。
7. この話が教えてくれること

正しい制度知識は、全員が共有していないと「不正」のように誤解される
会社として、自家調剤の取り扱い方針を明文化し、全スタッフに周知することが不可欠
現場の判断が孤立しないためにも、制度理解は「個人」ではなく「組織」で持つべき
制度を守る者がヒーローになれない職場では、いずれ真面目な人からいなくなります。
自家調剤のルールは、“知っている人だけ”ではなく、“みんなが知っている”状態にしましょう。
もし、自家調剤という言葉を今知って、自分や家族の薬学管理料を外す場合は、社内のコンセンサスを確認してからにしましょう。