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泡姫に溺れた真面目薬剤師 スポーツカーが消えた日

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車と植木鉢と、金庫の鍵が教えてくれた“前兆”

はじめに

彼は、真面目だった。

遅刻もない。クレームもない。

薬歴もきれいで、患者対応も丁寧。

だから、誰も疑わなかった。

少なくとも、最初は。

第1章|金が溶ける世界

ソープランドに“はまる”という言葉がある。

詳しいことは知らない。

でも、聞くところによると、金の減り方だけは異次元らしい。

彼も、最初はただの息抜きだったのだと思う。

仕事終わりの一杯のようなノリ。

たまの夜。

それが、いつの間にか“予定”になり、

やがて“生活の一部”になっていった。

第2章|スポーツカーが、消えた日

彼は、まじめだが車だけは金をかけていた。

典型的な車オタクだった。

最新モデルのスポーツカー。

薬局の前に止まると、患者さんが振り返るような車だった。

ある日、それがなくなった。

代わりにあったのは、年季の入ったセダン。

「車は、もう飽きたんだよ。薬剤師らしい車にしたよ」

そう言って笑っていた。

そのときは、誰も深く考えなかった。

でも、後から思えば、

あれが、最初の“見える前兆”だった。

第3章|植木鉢の、名前

彼の薬局には、小さな観葉植物がいくつかあった。

カウンターの隅。

調剤台の横。

休憩室の窓際。

ある日、事務員が気づいた。

植木鉢の縁に、手書きの文字があることに。

名前。

女性の名前らしきもの。

冗談半分で、誰かが言った。
「これ、推しの名前ですか?」

彼は、笑ってごまかした。

その笑いが、少しだけ、硬かった。

これ、嬢が普段から自分を思い出させて沼らせる常套手段らしい。

おかげで、彼は呆けてることが増えた。

仕事しながらも、心はどこかへ行ってしまっていたのかもしれない。

第4章|不正は、まだ始まっていなかった

ここが、重要なところだ。

この時点では、まだ不正はしていなかった。

金庫の金も、
売上も、
帳簿も、
すべて合っていた。

ただ、生活のバランスだけが、静かに崩れていた。

第5章|“会社方針”という、嘘

変化があったのは、ある日突然だった。

管理薬剤師が、事務員にこう言った。

「今日から、金庫の管理は管理薬剤師だけになった。会社方針だ」

事務員は、少し戸惑った。

でも、管理者の言葉だ。

何より金銭管理がなくなり、「楽になりすぎワロタ」くらいにしか考えていなかったらしい。

ただ、その“方針”は、どこからも通達されていなかった。

第6章|金銭管理者が一人になり、不正が動き出す

 

それまで、金庫は管理薬剤師と、調剤事務員の二人管理だった。

鍵は、二つ。
確認は、二人。
入出金は、二人。

それが、一人になった。

金庫の金を横領する不正の段取りだったんだろう。

事務所や金庫に防犯カメラもなく、自分一人しか金庫に触れないのであれば不正は直ぐには発覚しないと踏んだのだろう。

第7章|金庫の金に、手を伸ばした日

最初は、ほんの少額だった。

週末の歓楽のための金。

一時的な立て替え。

「あとで戻せばいい」

その“あとで”が、来なくなるまで、時間はかからなかった。

第8章|数字より先に、生活が崩れる

不正が発覚する前、同僚たちは、数字より先に、彼の“生活”に気づいていた。

  • 週末には上機嫌、普段は残業するのに週末は残業せずにサクッと帰宅。

  • 昼の眠気が増えた

  • 月末だけ、やたらと焦る

後になって思い返せば、帳簿より、顔色のほうが先に、真実を語っていた。

第9章|点が、線になる

ついに、金庫から一時的に持ち出した金が返せなくなる。

薬局の売上金の銀行入金が遅れる。

さすがにおかしいと思った社長が金庫をチェックし不正が発覚。

そこで、金庫管理は管理薬剤師のみという“会社方針”が、嘘だったことが表に出た。

第10章|泡のように消えた金と時間

彼は、姿を消した。

懲戒解雇だったので、もうまともな職には就けなかったんじゃないかと思う。

業界を離れたのか。

誰も、知らない。

ただ、残ったのは、植木鉢と、
金庫の管理ルール、そして防犯カメラだけだった。

第11章|この話の、いちばんの教訓

この事件は、風俗が原因で起きた不正ではない。

起きたのは、“一人に任せる仕組み”が生んだ不正だ。

人は、弱る。

生活が崩れるときもある。

でも、仕組みは、弱らない。

だから、仕組みが、人を支える必要がある。

今回は不正発覚からの防犯カメラ設置でした。

でも、不正をさせないためにもっと早く防犯カメラを導入していれば防げた事件だったかもしれない。

第12章|経営者向けメッセージ

数店舗を回していると、現場の“空気”までは、見えなくなる。

だからこそ、金が動く場所には、人ではなく、“仕組み”を置く。

  • 金庫は二人管理

  • レジはログ管理

  • 現金動線は可視化

  • 映像は第三者の目

レジの横に、“もうひとつの目”を

防犯カメラの本当の役割は、犯人を捕まえることじゃない。

「やろうかな」を、
「やめておこう」に変えることだ。

  • レジ周辺が映っている

  • 入金動作が記録される

  • 現金の流れが、あとから追える

それだけで、多くの小さな不正は、最初から生まれなくなる。

人の善意だけに頼らない。

仕組みで守る。空気で止める。

それが、現場を長く守る方法だ。

当時は防犯カメラはあったが、従業員のレジの手元までは映っていなかった。

防犯カメラという、もう一人の同僚

ここからは、不正をさせない、現場の道具としての話です。

ちょっとした出来心でスタッフを失う現場も大変だし、当の本人の人生も狂わせてしまう。自業自得かもしれないですが、多くそのようなケースを見ていると非常に悲しくなります。

「大規模なシステムは、いきなり無理」
「まずは、棚とレジ周りだけでも」

そんな薬局が、
一番、使いやすい選択肢が、2つあります。

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おわりに

人は弱いものかもしれない。

だから、
レジの横に、
金庫の前に、
もうひとつの“目”を置く。

それは、
不正を疑うためじゃない。
人が、弱ったときに、守るためだ。