最近、私はAIにこう頼んだ。
「面白い薬の名前を調べて」
「薬の名前が面白いって、ネットで言われてるやつ。イラストにして」
理想はこうだ。
薬剤師がニヤッとするやつ。
一般人が「なにそれw」と二度見するやつ。
現場の人間だけが、静かにコーヒーを吹くやつ。
やりかたは、AIに面白い名前を検索させてから、画像を作成してと依頼する。ただそれだけ。
結果?
AIが、だんだん人間の理性を置き去りにしていった。
① クリアナール
まずはAI一押し。
最初何が面白いのかわからなかったが、調べると
「語感がやばい」「ネットで下ネタにされがち」と聞いて期待した。
出てきたイラスト。
空、光、肺のシルエット、キラキラ演出。
もう完全に製薬会社の公式パンフレット。
……違う。
そうじゃない。
名前の面白さ、
1ミリも感じない。
「クリア」って言葉にAIが引っ張られすぎて、心までクリアになってしまった。
下ネタ感ゼロ。
薬学生の教科書みたいな顔してる。
② ヨーデル
次、期待枠。
結果。
アルプス。青空。風に舞う葉。さわやか背景。
おい。
これはトローチかハーブティーのパッケージだ。
トラネキサム酸配合とかのでたらめは良いとして、(←薬剤師かお前)
でもここで私はふとおもった。
AI、これを100%信じた。
だが薬剤師は違う。下剤だろ、これ。
この名前を見た瞬間、頭に浮かぶのはただ一つ。
「……よー出る、だろ」
誰も爽やかさなんて信じてない。
AIだけが、公式コメントをピュアに受け止めて、アルプスの妖精になってしまった。
③ 沈降炭酸カルシウム
ここで事件が起きる。
「面白いって言われる理由、だいたい“あのワード”でしょ?」
とAIに振ったら、「ち〇こ」というWordがガイドラインに引っかかるから出せませんと言われた。
……と思ったら。
次に出てきたイラスト、“それっぽい「ち〇こ」のイメージが画面いっぱいにみなぎっている。”
おい。
言葉は封じて、概念だけ解放するな。
これはもう、言語検閲を突破した抽象表現の勝利。
④ ドンペリドン
ここでAIが完全に壊れた。
出てきたのは、どう見ても高級スパークリングワインの世界観。
キラキラ。
光の粒子。
神々しい背景。
……違う。
それ、胃薬だ。
ドンペリドンは、祝杯をあげる薬じゃない。
むしろ、飲みすぎた翌日に静かに働く側だ。
AIの中で、「ドンペリ」=「お祝い」という回路がショートした瞬間だった。
⑤ フルボキサミン
ここから先、AIはもう止まらない。
テーマは「うつを吹き飛ばせ」。
出てきたのは、やたらエネルギッシュで、やたら勢いのあるビジュアル。
方向性は合ってる。
合ってるんだけど、テンションが深夜通販レベル。
「元気出そう」じゃなくて、「別の部分の目が覚める」仕上がり。
⑥ オパイリン
そして、最終形態。
もうAIは隠さない。
名前を、前面に、全力で押し出してきた。
背景?
演出?
世界観?
全部どうでもいい。
“ここを見ろ”と言わんばかりの構図。
これはもはや薬のイラストではない。
薬効などどうでもよい。(←薬剤師としてあるまじき発言)
言葉遊びの勝利宣言。
結論
AIは、こうだった。
最初は
公式資料を信じる、真面目な新人薬剤師中盤で
現場の空気を察し始める中堅最後は
深夜テンションのベテラン
名前に引っ張られ、意味に引っ張られ、ついには理性の処方箋を紛失した。
薬剤師的まとめ
ちなみに、チクピロン(過去の存在したパナルジンのGE)のイラストはこれだ。

AI薬剤師にも恥じらいはあるようだ。
そもそも、薬の名前って、開発者は「化学」「効果」「語源」を考えてつけている。
でもチクピロンは違うだろ。だからなくなったのか?(違う)
でも、現場の人間とネットの民は、まず“音”で受け取る。
そこに生まれるズレが、こうして今日も、AIと人間の両方を静かに壊していく。






























