親の介護で10年以上勤めた薬局を辞める。その前に知ってほしい、給与明細に載らない財産の話


薬剤師という資格は強い。
これは間違いありません。
全国どこでも求人があります。
- 結婚。
- 出産。
- 引っ越し。
- 親の介護。
人生の変化によって一度仕事を離れても、復帰している薬剤師はたくさんいます。
だから、
そう考える人もいると思います。
今回は、親の介護をきっかけに退職を考えた薬剤師について。
長年勤務した薬局を離れる前に確認したい「見えない資産」について整理してみます。
noteでのエピソードは👇

①有給休暇という「給与が保証された権利」

まず分かりやすいのが有給休暇です。
有給休暇というと、
「休める日」
というイメージが強いかもしれません。
でもお金の視点で見ると違います。
有給休暇とは、
働いていない日でも給与が支払われる権利
です。
つまり金銭的価値があります。
労働基準法では、通常勤務の場合、勤務年数によって有給休暇の日数が増えていきます。
| 勤続期間 | 付与日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
その差は年間10日。
例えば年収600万円の薬剤師。
年間勤務日数を約240日とすると、
600万円÷240日
1日あたり約25,000円の価値があります。
つまり、
有給10日分の差
=約25万円相当
になります。
同じ年収600万円の求人に転職できたとしても、
長年勤務した職場
→年間20日の有給
転職直後
→半年後に10日の有給
という差があります。
さらに有給休暇は翌年まで繰り越せます。
最大40日近く持っている場合、
40日×25,000円
約100万円相当。
もちろん現金でもらえるわけではありません。
でも、
親の通院。
介護認定の立ち会い。
ケアマネジャーとの面談。
急な体調変化。
そんな時に場合によっては給与を減らさず休める権利です。
(急な有給申請や、あとから有給にすることが本来認められないが、多くの会社はそれでもOKとしていることが多い)
②退職金という未来の給与

退職金制度がある会社の場合、これも大きな資産です。
退職金は単なる最後のお金ではありません。
長く働いたことに対する後払いの報酬という考え方があります。
そして多くの場合、勤続年数
が重要になります。
また、自己都合退職の場合、会社規程によって支給額が変わる場合もあります。
③企業型確定拠出年金(企業型DC)
最近は薬局チェーンやドラッグストアでも導入している企業があります。
会社が将来のために積み立ててくれる制度です。
これは、毎月の給与明細には載ってきません。
例えば会社が、
月1万円
拠出している場合。
年間12万円。
10年間なら120万円。
さらに運用益も期待できます。
④社会保険料の会社負担
給与明細を見ると、
健康保険料
厚生年金保険料
が引かれています。
でも実は会社も負担しています。
例えば厚生年金。
本人だけではなく会社も同じように負担しています。
標準報酬月額40万円なら、
本人負担:約36,000円/月
会社負担:約36,000円/月
年間では会社が40万円以上負担しています。
給与明細には出ません。
でも将来の年金につながる大切なお金です。
退職して収入が0になると、その期間は自己負担が大変なことになります。
⑤10年間積み上げた信用

最後に数字では表せない資産があります。
それが信用です。
10年以上勤務した薬剤師。
患者さんから、
「あの薬剤師さんに相談したい」
と言われる関係。
スタッフとの信頼。
会社からの評価。
家庭事情への理解。
これは求人票にはありません。
薬剤師資格は強い。でも積み上げた時間も資産です

薬剤師なら転職できます。
これは本当に大きなメリットです。
でも、
同じ年収の求人に転職できる=同じ条件になる
ではありません。
給与。
有給休暇。
退職金。
企業型DC。
社会保険。
患者さんや職場からの信用。
全部合わせて、今の待遇です。
親の介護は本当に大変です。
退職という選択が必要なこともあります。
でもその前に。
介護休業を利用する。
制度を確認する。
働き続けられる方法を考える。
今まで積み上げてきたものを確認してから決断しても遅くないと思います。
介護が不安なら「辞める準備」ではなく「選択肢の準備」をしておく

親の介護。
これは、ある日突然始まることがあります。
昨日まで元気だった親が、急に入院する。
退院後、今まで通りの生活が難しくなる。
そんなことは珍しくありません。
だからこそ、
「もし介護が始まったらどうするか」
を早めに考えておくことは大切です。
ただ、その答えがいきなり退職である必要はありません。
まず必要なのは、
今の自分が持っているものを確認することです。
有給休暇は何日あるのか。
介護休業は利用できるのか。
会社の時短制度はどうなっているのか。
退職金はどれくらい積み上がっているのか。
企業型DCなどの制度はあるのか。
長く働いたことで得ている待遇は何なのか。
それを知らないまま退職するのは、少しもったいないと思います。
薬剤師は転職しやすい職業です。
でも、
「転職できる」と「転職した方がいい」
は違います。
場合によっては、
今の職場で介護休業や有給を使いながら続ける方が良いこともあります。
逆に、
・勤務時間が合わない
・休みが取りづらい
・介護との両立が難しい
そんな環境なら、働き方を変える転職が必要になることもあります。
大切なのは、
感情だけで辞めないこと。
そして、
今の環境だけを見て判断しないこと。
- 自分が今持っている権利。
- 外に出た場合の条件。
その両方を比較して判断することです。
そのためには、薬剤師専門の転職エージェントに相談して、
「転職すべきか」
だけではなく、
「今の職場に残る価値がどれくらいあるのか」
を確認するのも一つの方法だと思います。

転職エージェントは、必ず転職する人だけが利用するものではありません。
今後の働き方を考えるための情報収集として利用することもできます。
親の人生も大切。
でも、自分の人生も大切です。
介護が始まってから慌てて決断するのではなく、
選択肢を持っておく。
それも、これからの時代の働き方なのかもしれません。



















