2026年7月31日、日本初となるED治療薬のスイッチOTC「シアリス」が、一部のドラッグストア・薬局で先行発売されました。

エスエス製薬

 

2026年8月31日からは全国の対象店舗へ展開予定です。

成分はタダラフィル10mg。

4錠入りで希望小売価格は5,808円(税込)。

これまで医療機関を受診して処方してもらう必要があったED治療薬を、処方箋なしで薬局・ドラッグストアで購入できるようになったということで、かなり大きな変化です。

ところが、市販化直後にちょっと興味深い調査結果が出ました。

全国の20~70代男性302人を対象にしたインターネット調査では、

83.8%がシアリスの市販化を「良いと思う」と回答。

その一方で、

75.2%が「薬局で薬剤師と対面して確認・指導を受けることに抵抗がある」と回答しています。

薬局で買えるのは歓迎。

でも、薬剤師とはあまり話したくない。

なかなか難しいところです。

ただ、実際の購入方法を調べてみると、

「薬局へ行ったら、その場でEDについて根掘り葉掘り質問される」

というイメージとは少し違います。

購入前のチェックシートは、自宅で先に済ませることができます。

これ、患者さんだけでなく、販売する薬剤師にとっても結構重要な仕組みだと思います。

市販シアリスの基本情報

項目内容
販売名シアリス
区分要指導医薬品
有効成分タダラフィル10mg
効能・効果勃起不全
対象18歳以上の成人男性
用法性行為の約1時間前に1回1錠
服用間隔24時間以上
包装4錠
希望小売価格5,808円(税込)
先行発売2026年7月31日
全国発売予定2026年8月31日

厚生労働省の要指導医薬品一覧にも、タダラフィル「シアリス」が掲載されています。承認日は2026年5月20日、販売開始日は7月31日です。

「市販薬になった=棚から取って買える」ではない

ここは最初に押さえておきたいところです。

シアリスは要指導医薬品です。

普通の第2類医薬品のように、

「棚から商品を取る」

「レジへ持っていく」

「購入」

ではありません。

エスエス製薬が案内している店頭購入は3ステップです。

STEP1 購入用チェックシートに回答する

STEP2 結果を薬剤師に提示し、確認・指導を受ける

STEP3 薬剤師が服用可能と判断した場合に購入する

1回の購入につき1箱までです。

なお、公式サイトには「EDセルフチェック」もありますが、これは購入時に薬剤師へ提示する購入用チェックシートとは別物です。

購入時に必要になるのは、シアリスを服用して問題ないか判定するためのチェックシートです。

「薬剤師にいろいろ聞かれるのが恥ずかしい」が75.2%

今回の調査で面白かったのがここです。

市販化自体については83.8%が好意的でした。

市販化を歓迎する理由では、「病院に行かずに済む」が78.1%と最も多くなっています。

つまり、

ED治療薬をもっと気軽に入手したい

というニーズそのものはかなりありそうです。

ところが、

「薬局で薬剤師と対面して確認・指導を受ける」

ことについては75.2%が抵抗あり。

さらに薬局で購入するときの不安として、

不安・抵抗割合
ほかのお客さんに見られる60.3%
薬剤師や店員に用途を知られる53.6%
レジで商品名を口に出す41.7%

という結果でした。

薬剤師側からすると、

「ED治療薬なんて仕事で扱う薬の一つなので、別に何とも思わないですよ」

という話なのですが、

薬剤師がどう思うかと、患者さんがどう感じるかは別問題です。

ドラッグストアの相談カウンターは、必ずしも完全な個室ではありません。

後ろをほかのお客さんが通ることもあります。

「シアリスを買いたいんですけど……」

と声をかけること自体に抵抗がある人がいても、それほど不思議ではありません。



そこで大事なのが「チェックシートは家で済ませられる」

ここは、市販シアリスを購入する人にはもっと知られてもいいと思います。

購入用チェックシートは、

LINE版、Web版、印刷版

が用意されています。

店頭で回答する必要はありません。

エスエス製薬自身も、

事前に回答しておくことで、購入時の確認をより適切かつスムーズに行える

と案内しています。

つまり、

ドラッグストアへ行く

薬剤師を呼ぶ

EDについて最初から質問を受ける

その場で一つずつ答える

という流れだけではありません。

自宅で落ち着いてチェックシートへ回答。

「服用可能」という結果をスマートフォンに保存、あるいは印刷。

それを店頭で薬剤師に提示できます。

チェックシートが全部OKなら、薬剤師にまた全部聞かれる?

ここは薬剤師として私も気になったので、メーカーの購入者向け情報だけでなく、販売店向け情報提供資料まで確認しました。

結論からいうと、

患者さんがチェックシートで確認した質問を、薬剤師が店頭でもう一度最初から最後まで一字一句聞き直す、と公開資料には書かれていません。

チェックシート自体が、

「薬剤師が服用の可否を判断するための重要なツール」

として設計されています。

一方で、

チェックシートがOKだったから、画面を見せて無言でそのまま購入できる

というわけでもありません。

商品の服用可否についての最終判定は薬剤師です。

薬剤師から必要な確認や服薬指導を受け、服用可能と判断された場合に購入できます。

イメージとしては、

「全部問題なしですね。ではもう一度20項目を最初から聞きます」

というより、

チェックシートの結果を土台にして、薬剤師が必要な部分を確認し、服薬指導を行う

という方が近いでしょう。

つまり、事前チェックは患者さんと薬剤師の両方を時短できる

これは結構大きなメリットだと思います。

患者さん側は、

店頭で人に聞かれながら一項目ずつ回答する時間を減らせる。

薬剤師側は、

ゼロからスクリーニングを開始する必要がない。

お互い時短になります。

今回の調査では、

「薬剤師に色々聞かれるのは気まずい」

という趣旨の自由回答も紹介されています。

でも、事前チェックを利用すれば、

「店頭でEDについて延々と質問される」

というイメージよりは、かなりスマートに購入できそうです。

もちろん、回答内容について薬剤師が確認する必要がある場合は質問されます。

安全性よりも時短を優先するものではありません。

それでも、

必要な確認を自宅で先に済ませられる

というのは、ED治療薬と相性のいい仕組みだと思います。

ただしチェック項目そのものは、意外と細かい

「事前にチェックして全部問題なしなら楽ですね」

で終わらないのがシアリスです。

販売店向け資料まで読むと、

薬剤師側も事前に知っておいた方がいい、ちょっと意外な確認事項があります。

硝酸薬だけ覚えておけばいいわけではない

ED治療薬といえば、

ニトログリセリンなどの硝酸薬との併用禁忌は有名です。

市販シアリスではそれだけでなく、

リオシグアト、イトラコナゾール、クラリスロマイシンなど

についても、使用中の場合は服用できない対象として販売店向け資料に示されています。

特にクラリスロマイシン。

循環器内科の薬だけ確認していると、見落としそうです。

「耳鼻科でもらっている薬があります」

なんてケースもあり得るので、

お薬手帳を確認する意味はかなり大きいと思います。

グレープフルーツは「その日だけ避ける」ではない

これも意外でした。

販売店向け資料では、

服用前・服用後それぞれ48時間以上

グレープフルーツジュースだけでなく、グレープフルーツの果汁や果皮を多く使用した加工食品なども避けるよう指導するとされています。

「今日だけグレープフルーツジュース飲まないでください」

ではありません。

血圧には具体的な数値がある

販売不可となる確認事項には、

低血圧:90/50mmHg未満

コントロール不良の高血圧:安静時170/100mmHg超

など具体的な基準があります。

さらに、最近3か月以内の心筋梗塞、最近6か月以内の脳梗塞・脳出血なども確認項目です。

「心臓の病気はありませんか?」

だけでは足りない可能性があります。

腎機能ではCockcroft-Gault式まで出てくる

販売店向け資料を読んでいて、個人的に一番「そこまで書いてあるのか」と思ったのが腎機能です。

医師から腎機能異常を指摘されている場合などには、薬剤師が血清クレアチニン値やクレアチニンクリアランスについて確認。

血清クレアチニン値が分かっていれば、

Cockcroft-Gault式を用いてクレアチニンクリアランスを推定できる

ところまで販売店向け資料に記載されています。

ただし、これは来店者全員についてCcrを計算するという意味ではありません。

腎機能に問題が疑われる場合の評価方法として示されており、正確な評価が困難、あるいは判断に迷う場合には販売せず医師への受診を勧めるとされています。

ドラッグストアでOTCを販売する資料にCockcroft-Gault式が出てくる。

薬剤師としてはなかなか印象的です。

「階段を1階分、早足で上れるか」という質問もある

これもED治療薬ならではです。

販売店向け資料では、

20分程度早足で歩く、または階段を1階分早足で駆け上がる程度の運動で、ひどく息苦しくなったり胸痛が出たりしないか

という項目があります。

さらに「階段を1階分」は、

おおむね10秒以内に上がる程度

に相当すると説明されています。

なぜこんなことを聞くのか。

性行為自体が心拍数や血圧などを上昇させ、心臓へ一定の負荷をかけるためです。

薬だけではなく、

そもそも性行為を行う心血管系の状態として問題がないか

を見る必要があります。

普通の風邪薬の相談では、まず出てこない質問です。

他のED治療をしている人も確認対象

すでに別のED治療を行っている人も注意が必要です。

販売店向け資料では、他のED治療薬との併用経験がないため、他のED治療を受けている場合には服用前に医師へ相談するよう案内されています。

現在はオンライン診療でED治療薬を入手している人も珍しくありません。

「処方されているタダラフィルが残っている」

「シルデナフィルも持っている」

という患者さんが市販シアリスを買いに来ることも想定しておいた方がよさそうです。

全部OKだった後は、むしろ服薬指導が大事

チェックシートがすべて問題なく、薬剤師の確認でも服用可能。

そこまで来たら、今度は正しく使ってもらうための説明です。

販売店向け資料では、すべての使用者に対して服用方法やタイミング、注意事項、効果、効果が感じられなかった場合、副作用などを説明することが示されています。

特に押さえておきたいのは、

  • 1回10mgを性行為の約1時間前に服用
  • 次の服用まで24時間以上あける
  • 食事の影響は受けにくい
  • 過度の飲酒は避ける
  • グレープフルーツ等は前後48時間以上避ける
  • 効果は服用後約30分から現れ、最大36時間
  • 性的刺激がなければ勃起する薬ではない
  • 4~8回服用しても効果がなければ医療機関を受診
  • 4時間以上勃起が続いた場合は速やかに受診

などです。

「36時間効く」

だけ聞くと、

36時間ずっと勃起している薬のような誤解もありそうなので、

性的刺激があったときに作用する薬

という説明は大事でしょう。

「薬剤師との対面が嫌」なら、事前チェックはかなり有効

今回の調査では、市販化には83.8%が好意的。

その一方で薬剤師との対面には75.2%が抵抗を感じるという、ちょっと矛盾した結果になりました。

でも実際の販売方法を見ると、

この二つは必ずしも両立しない話ではありません。

薬剤師による最終確認は残す。

でも、

回答できることは自宅で先に済ませる。

これだけでも店頭での滞在時間や会話量は減らせます。

メーカーも事前回答によって購入がスムーズになると案内しています。

薬剤師としても、

安全確認を削って時短するのではなく、

チェックシートを使って必要な確認だけに時間を使う

方が合理的です。

患者さんにとっても薬剤師にとっても、その方が楽です。

シアリス公式 チェックシート

 

将来的にはオンライン販売も予定されている

さらにエスエス製薬は、現在オンライン販売に向けて準備中としています。

公式サイトで示されている予定の流れは、

チェックシート

薬剤師とのオンライン面談

商品発送

です。

つまり、

薬剤師による確認をなくすのではなく、確認する場所を店頭からオンラインにも広げる

方向です。

ED治療薬では、かなり相性のいい仕組みではないでしょうか。

この「75.2%」は少し冷静に見る必要もある

最後に、今回の調査について一つ注意です。

調査は2026年8月19~20日に、全国の20~70代男性302人を対象としてインターネット上で行われたものです。

したがって、

「日本人男性の75.2%が薬剤師との対面を嫌がっている」

と一般化できる調査ではありません。

また調査を公表したのは、EDオンライン診療に関する情報メディアを運営している企業です。

EDオンライン診療は、間違いなく需要を食われるので否定的になるでしょう。

オンライン診療との比較結果を読む際には、この調査背景も押さえておいた方がいいでしょう。

それでも、

「病院に行くのは恥ずかしい」

という壁を下げるために市販化したところ、

今度は

「薬局で薬剤師に話すのも恥ずかしい」

という別の壁が見えてきた。

この問題提起自体は、ドラッグストアや薬局で働く側として考える価値があると思います。

まとめ

シアリスが薬局・ドラッグストアで購入できるようになったことは、ED治療へのアクセスという意味ではかなり大きな変化です。

一方で、要指導医薬品なので、薬剤師による確認なしに購入することはできません。

ただ、

店頭でEDについてゼロから全部質問される必要があるわけでもありません。

購入用チェックシートは事前に回答できます。

すべて問題なければ、その結果を薬剤師へ提示。

薬剤師が内容を確認して最終判定し、必要な服薬指導を行います。

患者さんは人前で回答する時間を減らせる。

薬剤師もゼロから問診する時間を減らせる。

お互い時短です。

安全確認を減らすのではなく、

必要な情報を先に整理しておくことで、対面そのものを短くする。

市販シアリスのように「相談すること自体が心理的なハードルになりやすい薬」では、この仕組みはかなり重要なのかもしれません。