調剤過誤

調剤過誤の対策が必要な6つの理由 

調剤薬局の仕事

 

僕のようないち薬剤師が調剤過誤につてわざわざ説明する理由

いままで健康被害などにつながる調剤過誤は経験したことが無いが、数の数え間違え含めて、4~5年ノーミスを継続できています。
テクニカルなこと以前に、ミスを防いでいる教訓のようなものがあり、新人教育時に使用してるオリジナルのものですが、少しでも参考になればと掲載することにしました。

新人教育にピッタリの内容だよ

分かってる人でも、6番目だけは読んでほしい

はじめに

薬剤師であれば絶対に避けるべき調剤過誤
数年のキャリアがあれば、調剤過誤には無縁という薬剤師はほぼ皆無と言っていいと思われます。

一般的には、調剤ミスはヒヤリハットや調剤過誤等に大別されますが、ここではあえて厳しく、

  • 患者様服用前に発見して事なきを得たもの
  • 仮に誤服用しても全く問題ないもの
  • 正確性から1mmでも外れた場合

これら全て調剤過誤とします。

調剤過誤をいかにして防いでいくか、自戒の意味も込めて調剤過誤対策のまとめを作成することにしました。

1:調剤過誤は患者様の健康、生命にかかわる

妊婦

薬剤師であれば当然のこととして理解している為、今更説明するまでもないと思います。

  • 成分名
  • 用法
  • 用量
  • 規格単位

など一つたりともおろそかにはできません。

2:調剤過誤は患者様の家族の運命も変えてしまうことがある

幼児

こちらも当然のことです。
もし自分の家族、子供が調剤ミスにより健康被害が起きてしまったらと考えれば想像するにたやすいことです。

3:調剤過誤は、処方医にも心配、迷惑ををかけてしまう

ポイント

特に、門前薬局(病院の隣に半ば併設されてる薬局)におては、患者様から見れば病院とほぼ一体のものとみなされることもあります。

また、健康被害が発生した場合は医師がその緊急対応に追われる可能性があります。

誤服用後、幸いにも健康被害が発見できなかったとしても、本当に大丈夫なのか患者様に問い詰められることが想像されます。

医師が大丈夫であると判断したのち、その後因果関係不明の健康被害が発生した際には、再び対応に苦慮するケースも想定されます。

4:調剤過誤は、薬剤師の信頼を失墜させ、今後の治療にも影響する

かぜ

薬剤師に課された責務は、正しく調剤することに加えて、処方の不備やほかの医療機関との飲み合わせのチェック等多岐にわたります。

それにもかかわらず、一番初歩的な調剤ミスを発生させてしまった場合は、その薬剤師のみならず、他の薬剤師の信頼も失墜させることとなってしまいます。

信頼できない薬剤師となってしまうと、投薬時に患者様からの情報も得にくくなり、副作用の見逃しや併用薬との相互作用の見落としなどのリスクが高まります。

その結果、新たな調剤過誤を発生させる要因となってしまうことも考えられます。

5:調剤過誤は薬局の経営者、関係者の運命も変えてしまうことがある

薬局にて調剤過誤が発生した場合、その健康被害の程度が大きければ大きいほど薬局の経営に与えるダメージは大きくなります。

薬局許可の取り消しなどがなされた場合は、経営者や関係スタッフともに路頭に迷うことも出てくるかもしれません。

また、門前薬局が営業停止などの場合は、すぐに代理を引き受けてくれる薬局が見つかるとも限らず、病院や患者様にも迷惑が掛かることが考えられます。

ここまでは、薬剤師の人なら、常に考えていることだと思います。

6:調剤過誤を起こした薬剤師の運命も変えてしまうことがある

実はここからが本題です。

薬剤師の人は、より真剣に意識してほしいとことです。

軽微なミス:健康被害が発生しなかったとしても、ミスを発生させてしまったという自責の念から、精神的に不安定となりさらに大きなミスを発生させてしまう可能性がある。

重大なミス:おそらく想像したくないことであるし、なにが起こるかも一概には言えない。

そのため、一部フィクションを交えた例をあげたいと思います。

 

小児科の処方箋を応需する薬局において、薬剤の取り違えが発生しました。

調剤を担当したのは30代半ばの女性の薬剤師Aさん

普段は勤務態度もよく、患者様からの評判も上々でした。

この日もいつも通り出勤して、いつも通りルーティンの仕事をこなして退社しました。

翌日のこと、Aさんが調剤した薬を服用した子供が意識混濁となり救急搬送されました。

救急病院での検査の結果、Aさんの調剤した粉薬から、本来検出されるべきではない成分が大用量検出されました。

よって、子供が意識混濁に陥った原因が、Aさんの調剤過誤によるものであると判明しました。

その後、救急病院の懸命な処置の結果子供の意識も戻り、数日後には退院のめどが立ちました。

いかがでしょうか?

ここまで読むときっと、「大きな健康被害が発生しなくて、まあよかったですね」と思うかもしれません。

しかしながら、より当事者の視点に立って深く思考を巡らせる必要があります

患者様の家族の立場では、今後子供に後遺症が出てしまったらどうしようかと考えます。

では、薬剤師Aさんの立場に立って考えるとどう考えると思いますか。

  • ミスしたことは深く反省し、これから二度とミスを発生させないようにするかを真剣に考える。
  • 患者さん、患者さんの家族に深く謝罪する。
  • それ相応の損害賠償をする。
  • 薬剤師の免許停止 もしくは取り消し(←故意によるものでなければ、取り消しは考えられないが)

くらいでしょうか?

僕も、この話の結末を聞くまではその程度しか考えられませんでした。

しかし現実はもっと深刻でした。

 

 

 

 

 

その後、薬剤師のAさんは、自ら命を絶ちました。

 

 

 

30代半ばの女性です。

ママさん薬剤師だったもしれません。

ミスを起こした日も、いつも通り子供のお弁当を作り旦那さんを送りだして出勤したのかもしれません。

愛する家族、子供たちもいたかもしれません。

それらをすべて捨ててしまうくらいの罪悪感にさいなまれたんだと思います。

この文章を書いている今でさえ、その心境を考えると涙が出てきます。

もちろん患者様に健康被害が出てしまったことは許されることではありません。

しかしながら、誰も命をもって償えなどとは言ってもいないと思います。

でも、ここまで精神的に追い詰められてしまう。

いままで築き上げたすべてを投げ出してでも償いたくなる。

そこまで追いつめられるということです。

くれぐれも、過誤を起こした場合はAさんのように深く反省しなさいという意味でないことは明言しておきます。

最後に

自分たちが常に触れている医薬品は、患者さんの命だけでなく、自分の命も背負っているんだということを、肝に銘じて欲しいと思います。(決して上から目線ではありませんよ)

そして、すこしでもミスをしそうになった時や気のゆるみを感じたときは、
薬剤師Aさんの話を思い出し、その思いを無駄にしないように正確な調剤に集中するよう
心を改める材料になれば良いと考えています。

次からは、調剤過誤の実例と対策などを個別ケースで考えていこうと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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