パート薬剤師の勤務日数が減った場合、有給休暇の付与日数も減るのでしょうか。

例えば、勤続7年のパート薬剤師が、週4日勤務から週2日勤務へ変更した場合。

法律上、新たに付与される有給休暇は15日から7日になることがあります。

しかし、すでに付与された15日を7日に減らしてよいわけではありません。

また、会社が一方的にシフトを減らし、その結果として有給休暇を減らすことも認められません。

2026年6月19日、厚生労働省はシフト制労働者の雇用管理に関する留意事項を改正し、有給休暇の取り扱いを具体的に整理しました。

今回は労働基準法第39条、労働基準法施行規則、厚生労働省の公式資料を基に、薬局で起こりやすいケースを解説します。

パート薬剤師だけでなく、登録販売者、調剤事務、管理薬剤師、薬局経営者にも関係する内容です。

パート薬剤師にも有給休暇はある

まず大前提です。

年次有給休暇は、正社員だけの制度ではありません。

パートタイム労働者、アルバイト、シフト制労働者も、労働基準法上の条件を満たせば有給休暇を取得できます。

労働基準法第39条では、基本的に次の2つが要件となります。

① 雇入れの日から6か月間継続勤務していること

② その期間の全労働日の8割以上出勤していること

その後も、各算定期間の出勤率などの要件を満たせば、原則として1年ごとに新たな有給休暇が発生します。

ここで重要なのは、正社員かパートかではなく、勤務条件によって付与日数が決まるという点です。

例えば、週5日勤務のパート薬剤師なら、通常の労働者と同じ日数が付与されます。

週4日勤務でも、所定労働時間が週30時間以上なら、通常の労働者と同じ付与日数です。

一方、週の所定労働時間が30時間未満で、週4日以下などの条件に該当する場合は、所定労働日数に応じて比例付与されます。

【一覧表】勤務日数別の有給休暇付与日数

まず、法定の付与日数を確認しましょう。

通常の労働者と同じ日数が付与される場合

週5日以上勤務、週30時間以上勤務など、通常の付与の対象となる場合です。

継続勤務期間新たな付与日数
6か月10日
1年6か月11日
2年6か月12日
3年6か月14日
4年6か月16日
5年6か月18日
6年6か月以上20日

週30時間未満・週4日以下の場合

週所定労働日数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上
週4日7日8日9日10日12日13日15日
週3日5日6日6日8日9日10日11日
週2日3日4日4日5日6日6日7日
週1日1日2日2日2日3日3日3日

※週以外の期間で所定労働日数を定めている場合には、年間所定労働日数に応じて判定します。週30時間以上など通常の付与の対象となる場合は、比例付与表ではなく上の通常の表を使用します。

この表は労働基準法施行規則第24条の3に基づくものです。

ケース① 勤続7年、週4日から週2日に変更した場合

ここからは具体例です。

あるパート薬剤師が7年間勤務しているとします。

これまでは週4日、1日6時間勤務。

週24時間なので、比例付与の対象です。

勤続6年6か月以上なら、週4日勤務の新規付与日数は15日です。

しかし、家庭の事情から、本人と会社が合意して週2日勤務に変更したとします。

週2日勤務であれば、同じ勤続年数でも新規付与日数は7日です。

つまり、次の基準日に新たに付与される日数が15日から7日になる場合があります。

これは、法律上の比例付与の仕組みによるものです。

ただし、いつ勤務条件を変更したかが重要です。

すでに付与された有給休暇は減るのか?

例えば、2026年5月1日に有給休暇15日が付与されたとします。

その後、2026年10月に週4日から週2日へ勤務条件を変更しました。

この場合、10月に変更したからといって、5月に付与済みの15日を7日に減らすことはできません。

2027年5月1日に新たに付与する日数は、基準日時点の所定労働日数などによって判定します。

週2日勤務の条件が適切に成立していれば、次の新規付与は7日となるケースがあります。

既存の権利と、新規付与される権利は分けて管理する必要があります。

ケース② 会社が勝手にシフトを減らした場合

こちらは、より注意が必要なケースです。

週4日勤務の契約で働いていたパート薬剤師。

ところが、薬局の処方箋枚数が減ったため、会社が勤務日数を減らすことにしました。

「来月から週2日でお願いします」

本人は週4日の勤務を希望しています。

この場合、会社が一方的に勤務条件を変更してよいのでしょうか。

厚生労働省が2026年6月19日に改正した留意事項では、所定労働日数とは労働契約によって労働義務が設定された日数であり、会社の都合で一方的に増減させることは認められないと明記されています。

労働契約の内容を変更する場合は、原則として労働者と使用者の合意が必要です。

シフト表を作成しているのが会社だからといって、所定労働日数を自由に変更できるわけではありません。

また、会社側の事情で労働者を休業させた場合には、労働基準法第26条の休業手当が問題になることもあります。

ただし、具体的な休業手当の要否は労働契約、シフトの確定状況、休業理由などによって異なります。

「シフトが減ったから、有給も減った」という説明だけでは不十分です。

ケース③ 毎月シフトが変わり、週何日勤務か決まっていない場合

調剤薬局で多いのが、このケースでしょう。

例えば、パート薬剤師が複数名いて、毎月希望を確認してシフトを作成する薬局です。

ある月は週2日。

別の月は週3日。

繁忙期には週4日勤務することもあります。

こうした場合、有給休暇を何日付与すればよいのでしょうか。

2026年6月19日改正の厚労省留意事項では、まず基準日時点の所定労働日数を確認することとされています。

あらかじめ所定労働日数を定めていない場合で、算定が難しいときには、次の方法を用いることができます。

付与時期所定労働日数が算定しにくい場合の扱い
雇入れ6か月後最初の6か月間の労働日数実績を2倍
雇入れ1年6か月後以降前年の労働日数実績

これらを、基準日における年間所定労働日数とみなして付与日数を計算することが認められています。

また、契約時に「月12日程度」など目安となる勤務日数を定めている場合には、その目安に基づく付与日数が実績による計算結果を上回るときに限り、目安を使うことも認められています。

重要なのは、会社が都合のよい数字を選んでよいわけではないということです。

勤務実績、労働契約の内容、所定労働日数の目安などを確認する必要があります。

「シフト制だから計算できない」

「勤務日数が決まっていないから有給は付かない」

という対応は認められません。

ケース④ 週4日勤務でも、週30時間以上ならどうなる?

ここは間違いやすいところです。

例えば週4日、1日8時間勤務するパート薬剤師。

週32時間勤務です。

勤務日数だけを見ると週4日ですが、週の所定労働時間が30時間以上なので、通常の労働者と同じ付与日数が適用されます。

勤続6年6か月以上なら、20日です。

一方、週4日、1日6時間で週24時間なら、比例付与の対象となり15日です。

つまり、勤務日数だけでなく、週所定労働時間も必ず確認する必要があります。

週4日勤務だから15日、と機械的に計算するのは間違いです。

ケース⑤ 年5日の有給取得義務はパートにもある?

あります。

ただし、すべてのパート社員が対象になるわけではありません。

労働基準法第39条第7項では、法定の年次有給休暇が10日以上付与される労働者について、基準日から1年以内に5日を取得させることを使用者に義務付けています。

例えば、勤続7年の場合。

勤務条件新規付与年5日取得義務
週4日・週30時間未満15日あり
週3日・週30時間未満11日あり
週2日・週30時間未満7日なし
週4日・週30時間以上20日あり

対象になるかどうかは、その年に新規付与された法定の有給休暇が10日以上かどうかで判断します。

前年からの繰越分を足して10日以上になった場合は、それだけで年5日取得義務の対象になるわけではありません。

一方、前年から繰り越した有給休暇を実際に取得した日数は、年5日の取得実績に含めることができます。

また、年度途中で勤務条件が変わっても、すでにその基準日に10日以上の法定年休が付与されている場合、当該期間の年5日取得義務が当然になくなるわけではありません。

会社は対象者ごとに適切に管理する必要があります。

ケース⑥ シフトが減ったら、過去の有給休暇は消える?

消えません。

勤務日数を変更したことだけを理由に、適法に付与された年次有給休暇を遡って減らすことはできません。

例えば、2026年5月に15日が付与され、2027年5月に新たに7日が付与されたとします。

途中で有給休暇を使用していなければ、付与日数の合計は22日です。

もちろん、実際の残日数は取得状況や失効した日数によって変わります。

法定の年次有給休暇には2年の時効があります。

そのため、付与から2年を経過した有給休暇は、法律上の時効により消滅する場合があります。

企業が独自に法定を上回る有給休暇制度を設けている場合には、就業規則なども確認する必要があります。

注意したいのは、「今年の新規付与が7日になった」ことと「有給残高が7日になった」ことは違うという点です。

従業員へ説明する場合は、新規付与日数と残日数を別々に示すべきでしょう。

ケース⑦ 有給休暇を取得した日の給料はどう計算する?

パート薬剤師の場合、有給休暇を取得した日の賃金額も重要です。

例えば、時給2,500円で1日6時間の所定労働時間がある場合。

通常の賃金方式を適用するなら、

2,500円 × 6時間 = 15,000円

となります。

一方、1日4時間の勤務日に有給休暇を取得した場合には、同じ方式なら10,000円です。

ただし、年次有給休暇取得時の賃金計算には、法律上認められた複数の方式があります。

就業規則等により定められた「通常の賃金」や「平均賃金」などの方式によって、支払額が異なる場合があります。

したがって、すべてのパート社員に対して一律に「時給×8時間」を支払えばよいわけではありません。

2026年6月の厚労省資料でも、時間給の場合の通常の賃金は、有給休暇取得日の所定労働時間を基に計算することが説明されています。

有給休暇を申請された日に、シフトを入れなければよい?

シフト制で特に問題になりやすいのが、このケースです。

パート薬剤師から、

「来月の15日は有給休暇を取りたいです」

と希望が出たとします。

その日をシフトから外して、単なる休日扱いにしてしまえば、有給休暇を使わずに済むのでしょうか。

ここは慎重な判断が必要です。

有給休暇は、原則として労働義務のある日について取得する制度です。

もともと休日である日に、有給休暇を取得するものではありません。

しかし、労働者が有給休暇を取得しようとしていることを理由に、使用者が恣意的に勤務予定日を外して取得を妨げる運用は問題になり得ます。

勤務予定の確定方法や、労働契約上の所定労働日数を確認する必要があります。

特に、会社が一方的にシフトを減らすことは認められないという厚労省の留意事項を踏まえるべきでしょう。

シフト作成時の申請期限や調整方法について、あらかじめルールを整えておくことも重要です。

有給休暇を取得させない理由として「人手不足」は通用する?

薬局では、薬剤師が1人休むだけで業務への影響が大きいことがあります。

薬剤師が2人勤務している店舗で、1人が有給休暇を希望した場合などです。

労働基準法では、原則として労働者が請求する時季に有給休暇を与える必要があります。

事業の正常な運営を妨げる場合に限って、使用者には時季変更権が認められています。

ただし、単に人員が少ない、忙しい、代わりのスタッフを確保するのが大変というだけで、いつでも時季変更できるわけではありません。

事業の規模、業務の内容、代替要員を確保するための努力など、具体的な事情が問題になります。

また、時季変更権は取得時期を変更するものであり、有給休暇そのものを消滅させる権利ではありません。

「うちの薬局は人が少ないから、有給は取れない」

という運用は適切ではありません。

管理薬剤師が確認すべき実務ポイント

パート薬剤師や調剤事務の有給休暇を管理する場合、最低限、次の情報を確認する必要があります。

① 雇入れ日と継続勤務期間

② 有給休暇の基準日

③ 労働契約上の週所定労働日数・週所定労働時間

④ シフト制の場合の勤務日数の決め方

⑤ 算定期間の出勤率

⑥ 過去の付与日数・取得日数・繰越残日数

⑦ 年5日の有給取得義務の対象かどうか

⑧ 勤務条件の変更に本人の合意があるか

⑨ 有給休暇取得時の賃金計算方法

⑩ 就業規則や労働契約書に定められた会社独自の条件

これらを確認せずに、単純に直近のシフト回数だけで計算すると誤りが生じる可能性があります。

なお、年次有給休暇管理簿については、基準日、取得時季、取得日数などを記載して保存する義務があります。

日々の勤怠管理や給与計算だけでなく、年次有給休暇の権利を正確に把握できる管理体制が必要です。

よくある質問

Q. パート薬剤師は勤続10年でも、有給20日とは限らない?

はい。

勤続年数だけでは決まりません。

週の所定労働日数や所定労働時間によって、比例付与となる場合があります。

Q. 週3日勤務で、6年6か月以上働いていたら何日?

週30時間未満で比例付与の条件に該当すれば、11日です。

その年に10日以上付与されるため、年5日の取得義務の対象にもなります。

Q. 月ごとのシフトで勤務日数が変わる場合は?

労働契約上の所定労働日数や、基準日時点の勤務条件を確認します。

それでも算定が難しい場合には、2026年6月の厚労省資料に示された方法で、前年の労働日数実績などを利用できます。

Q. 有給休暇を申請したら、会社から勤務日を減らされた

労働契約の内容や、シフトの確定状況などの確認が必要です。

有給取得を妨げる目的で一方的に勤務日を減らした場合には、法的な問題となる可能性があります。

Q. 有給休暇を時間単位で取得できる?

労使協定など法定の条件を満たせば、年5日の範囲で時間単位の取得が認められています。

ただし、時間単位年休の取得分は、会社が確実に取得させる必要のある「年5日」には算入できません。

Q. 昔の有給休暇は何年前まで使える?

法定の年次有給休暇の時効は原則2年です。

前年からの繰越分を取得できる場合があります。

まとめ|有給休暇は「勤務日数が減ったら減る」で終わらない

パート薬剤師の勤務日数が減った場合、新たに付与する有給休暇の日数が少なくなることはあります。

しかし、それだけで判断することはできません。

すでに付与した有給休暇はどうなるのか。

勤務日数の変更は本人が希望したものなのか。

会社が一方的にシフトを減らしていないか。

そもそも、その薬局では所定労働日数をどのように定めているのか。

これらを確認して、初めて正しい判断ができます。

管理薬剤師がシフト管理を担当している薬局もありますが、労働基準法上の責任は使用者である会社にあります。

店舗だけに判断を任せず、本部や人事・労務担当者が正確に制度を運用することが重要です。

医薬品の適正使用と同じように、労務管理にも正しいルールがあります。

2026年に改正された厚労省のシフト制留意事項を機会に、パート社員の有給休暇の管理方法を見直してみてはいかがでしょうか。

 

参考資料

厚生労働省(2026年6月19日改正)
「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001713615.pdf

厚生労働省「いわゆる『シフト制』について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html

厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/kijyunhou_6_00001.html

e-Gov法令検索「労働基準法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049

e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023

厚生労働省「年次有給休暇取得促進特設サイト」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/roudousya.html

厚生労働省「年次有給休暇権の時効は?」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/yukyu/q6.html

※本記事は2026年10月18日時点の法令・行政資料に基づく一般的な解説です。個別の労働条件、基準日、就業規則、シフトの確定状況によって判断が変わるため、具体的な紛争では労働基準監督署、総合労働相談コーナー、弁護士等へご相談ください。