安いデジタル体温計ってどうなの?実測式と予測式の違いを薬剤師が解説

安いデジタル体温計ってどうなの?買う前に知りたい「実測式」と「予測式」の違い

ドラッグストアで体温計を見ていると、
「こっちは500円くらいなのに、こっちは1,500円以上する」
なんてことがあります。
見た目はどちらも普通のデジタル体温計。
だったら、
「体温が測れればいいし、安いのでいいや」
と思いますよね。
でも、ちょっと待ってください。
そして、
「デジタル体温計なら、どれでも20秒とか1分くらいで測れるでしょ」
と思っていると、買ってからびっくりすることがあります。
実測式の場合、わきでしっかり測るには約10分かかるからです。
ドラッグストアでは「安いのでいい」と言われることがあります
私がドラッグストアで働いていた頃、
「体温が測れればいいから、一番安いのでいいよ」
と言われることがありました。
そんなとき、安い商品が実測式なら、
「こちらは安いですが、測定に時間がかかりますよ」
ということはしっかり説明していました。
実測式を知らずに購入すると、
「全然測れない」
「時間がかかりすぎる」
「前に使っていた体温計はすぐ測れた」
となることがあるからです。
そこで売り場でも、実測式の体温計には、
「この商品は測定に時間がかかります」
と分かるようにPOPを大きく出していました。
もちろん、実測式が悪い体温計という意味ではありません。
時間がかかることを理解したうえで、安い実測式を選ぶなら何の問題もありません。
問題なのは、
「デジタル体温計=すぐ測れる」
と思い込んで買ってしまうことです。
実際、テルモが1,400人を対象に行った調査では、電子体温計に「実測式」と「予測式」の2方式があることを知らなかった人が47.5%。
方式を理解して購入していた人は28.0%でした。
つまり、実測式と予測式の違いを知らずに体温計を買っている人は、決して珍しくありません。
まず結論|実測式と予測式はここが違う

大まかな違いを先にまとめます。
| 実測式 | 予測式 | |
|---|---|---|
| 測定方法 | 実際の温度を測定 | 温度上昇から平衡温を予測 |
| わきでの測定時間 | 約10分 | 数十秒程度※ |
| デジタル表示 | ○ | ○ |
| 特徴 | シンプルな商品も多い | 短時間で測りやすい |
| 向いている人 | 時間がかかっても問題ない人 | 短時間で測りたい人 |
※予測時間は商品によって異なります。
一番覚えておいてほしいのは、
「デジタルかどうか」と「短時間で測れるかどうか」は別の話
ということです。
液晶画面に「36.5℃」などと数字が表示される電子体温計でも、実測式ならわきでの検温には約10分必要です。
なぜ実測式は約10分もかかるの?

「デジタルなのに、なんで10分も必要なの?」
と思いますよね。
体温計をわきにはさんだ瞬間、体温計の先端がすぐに体温と同じ温度になるわけではありません。
わきに体温計を入れると、時間とともに表示される温度が上昇していきます。
そして、やがてこれ以上ほとんど温度が上昇しない状態になります。
この状態の温度を「平衡温」といいます。
オムロンによると、わきの場合、平衡温になるまでには10分以上かかります。
実測式は、その温度変化を実際に測っていく方式です。
そのため、わきで正しく実測するには約10分必要になります。
予測式は「10分後の体温」を短時間で予測する
一方の予測式は考え方が違います。
測り始めてからの温度上昇を分析して、
「この上がり方なら、平衡温はこのくらいになるだろう」
と計算します。
そのため、約10分待たなくても、数十秒程度で体温を表示できます。
つまり、
実測式
→ 実際に平衡温になるまで測る
予測式
→ 温度上昇から平衡温を予測する
という違いです。
「予測式は20秒時点のわきの温度をそのまま表示している」
というわけではありません。
実際に安い実測式の体温計を見てみる
具体例として分かりやすいのが、
オムロン 電子体温計 けんおんくん MC-170
です。
MC-170は液晶画面が付いた普通のデジタル体温計ですが、実測式です。
わき:約10分
口中:約5分
が測定時間の目安です。
予測機能はありません。
そのため、
「電子体温計だから30秒くらいで測れるだろう」
と思って購入すると、
「あれ?全然測り終わらない……」
となる可能性があります。
ただし、MC-170が安いから体温を正しく測れないという意味ではありません。
シンプルな実測式の電子体温計です。
「約10分かかっても構わないから、できるだけ安いものが欲しい」
という人なら、十分選択肢になります。
約20秒で測りたいなら予測式
比較対象として分かりやすいのが、
テルモ電子体温計C232
です。
こちらは予測式+実測式。
予測検温なら平均約20秒で測定できます。
さらに、そのまま測定を続ければ約10分で実測検温もできます。
つまり、
普段は約20秒で予測検温
必要なら、
そのまま約10分測って実測検温
という使い方ができます。
MC-170とC232を比較すると違いが分かりやすい
| オムロン MC-170 | テルモ C232 | |
|---|---|---|
| 測定方式 | 実測式 | 予測式+実測式 |
| 予測検温 | なし | 平均約20秒 |
| わき実測 | 約10分 | 約10分 |
| 口中測定 | ○ 約5分 | × |
| 前回値メモリ | ○ | ○ |
| 温度精度※ | ±0.1℃ | ±0.1℃ |
| 特徴 | シンプルな実測式 | 短時間の予測検温が可能 |
※メーカー所定の試験条件における温度表示の精度。
こうして比べると、
「安い体温計は精度が悪く、高い体温計は精度がいい」
という単純な違いではないことが分かります。
大きな違いの一つが、
測定に必要な時間
です。
「オムロンは遅くてテルモは速い」という話ではありません
ここは誤解しないでください。
メーカーによる違いではありません。
オムロンにも予測式の電子体温計があります。
たとえばオムロンの「けんおんくん MC-681」は、
予測検温:約20秒
実測検温:約10分
です。
つまり、
オムロン=実測式
テルモ=予測式
ではありません。
どちらのメーカーにも複数の商品があります。
今回MC-170とC232を比較しているのは、
実測式と予測式の違いが非常に分かりやすい2商品だから
です。
体温計を選ぶときはメーカー名だけを見るのではなく、
「実測式なのか、予測式なのか」
を確認してください。
実測式の体温計はおすすめできない?
実測式そのものが悪いわけではありません。
たとえば、
「年に数回しか使わない」
「10分くらい待つのは別に構わない」
「とにかく安いものが欲しい」
という人なら、実測式を選ぶのも一つです。
一方、
- 子どもの体温を測る
- 毎朝体温を測る
- 発熱時に何度も測る
- 10分間じっとしているのが難しい
- 今まで短時間の予測式を使っていた
という人なら、予測式の方が使いやすいでしょう。
特に子どもの体温を測るとき、
わきに体温計を入れたまま約10分
というのは結構大変です。
価格だけで決めず、実際に使う場面を考えて選んだ方がいいでしょう。
安いデジタル体温計って結局どうなの?

結論です。
安いデジタル体温計だからダメ、ということはありません。
ただし、
「なぜ安いのか?」
は確認してから購入することをおすすめします。
特に確認してほしいのが、
「実測式・予測式」と「測定時間」
です。
「安いのでいいや」
と購入した商品が実測式だった場合、
家に帰ってから、
「えっ、10分もかかるの?」
となるかもしれません。
反対に、
「年に数回しか使わないから、10分かかっても安い方がいい」
という人なら、実測式を選ぶのも合理的です。
大切なのは、
安いか高いかではなく、違いを知ったうえで選ぶこと。
ドラッグストアの体温計売り場で安い商品を見つけたら、
値段だけを見るのではなく、パッケージにある
「実測式」
「予測式」
「約○秒」
という表示も確認してみてください。
「デジタルだから、どれでもすぐ測れる」
とは限りません。

















