ドラッグストア薬剤師だけが知らない、ドラッグストア薬剤師の危険性
~ドラッグストア薬剤師が調剤を経験するべき2つの驚異的なメリット~
このページは、ドラッグストアに勤務する薬剤師さんで、調剤経験がない人に向けて書かれています。
また、調剤を経験しないままでいいのかなと、もやもやしている人向けです。
私自身かつてドラッグストア店長として仕事していた時の感情などに基づいていますので、一部、ドラッグストア薬剤師をディスるように感じられる点があるかもしれません。
実際は、どちらが良いと比較できるものではないことは十分承知です。
この先、ドラッグストアで経営幹部まで行くぜ!調剤なんてクソだ!
と思っている人には、一部不快に感じる可能性がありますのでご了承ください。
(もとより、必要のない記事となります。)
始めに
このページは、ドラッグストア店長から調剤薬局へ職を変えたときに分かったリアルな情報と経験に基づいています。
ドラッグストアでしか働いたことがない薬剤師さんにアドバイスできることはないかと考え作成しました。
実際にそれぞれの職業を経験して得られた情報なので、転職情報サイトとは一味違った情報が得られます。
作者の経歴:
- ドラッグストア店長10年以上
- 調剤薬局管理薬剤師5年以上
私の経験談を聞いた大手ドラッグストア店長の友人は、その影響もあってか数年後に調剤部門に希望を出して移りました。
結果的にドラッグストアから調剤へ移った友人と話を重ねるうちに、次の結論に至りました。
薬剤師は30代後半までに調剤を経験しておいた方がよい。
たとえドラッグストアの店長というキャリアと引き換えであっても、調剤の経験は早いほうが良い。
ドラッグストアの仕事内容
ドラッグストアの仕事内容は、一般的な小売業の仕事に、薬の管理が付いてくるといった感じです。
おもに薬剤師業務以外の仕事は次のようなイメージです。
ドラッグストア薬剤師の仕事
店舗内の品出しやレジ、売り場変更や清掃など、多岐にわたります。
また、調剤薬局よりもいろいろなお客様の要望に対応することになります。
- 若いうちは、バイトと和気あいあいと楽しめるのがいいところでもあります。
- 様々な商品知識を身に着けることができる。
- 対人スキル、コミュニケーション能力の向上。
これらは調剤薬局以上に得るものがあります。
さらに店長職となれば、スタッフの採用、教育、店舗の売り上げ、在庫管理などのマネジメント力が身に付きます。
しかしながら、ドラッグストアにおける薬剤師の仕事といえば、
- 数少ない第1類医薬品の販売や、
- めったに新しい成分が承認されない第2類以降のOTC薬の販売
となります。
登録販売者にOTC医薬品の教育をすることはあっても、正直それほど勉強しなくても、OTC薬の進化は遅いので問題なくやっていけます。
そして、どの仕事もレベルこそ違うにしろ、バイトでもできる仕事がほとんどです。
ドラッグストア薬剤師は、意識しなければまったく勉強しなくなってしまいます。
勉強しなくてもそこそこ成り立ちますから。
なんだか毎日モヤモヤする
このままドラッグストアの仕事を続けていてもいいのだろうか?
薬剤師という肩書を捨てて、経営に身を置きたいと考えるなら、それはそれでアリだと思います。
でも、せっかく取得した資格を磨かずにさび付かせたままにしておいてもいいのだろうか
もやもやしたものが残る人も多いのもドラッグストア薬剤師の特徴だと思います。
ドラッグストアのメリット
ここで、どちらでも働いたことがあるものとして、調剤薬局と比較して、ドラッグストアで働くメリットはどのようなものがあるか整理してみたいと思います。
ドラッグストア店長10年以上
調剤薬局管理薬剤師5年以上
どちらにもしっかりと身を置いたうえでの解説です。
- メリット:接客販売で、【OTCの処方】ができるようになる
調剤をやっていると、自分で薬を選択するシーンは非常に少ないです。 - メリット:健康食品、サプリメントに詳しくなる
いろいろな健康食品が出ては消えて、諸行無常を感じます。 - メリット:介護用おむつに詳しくなる
これは、調剤薬局でも必要だがなかなか身につかない知識なので、役立ちます。 - メリット:ガーゼ、ばんそうこう、サポーターや局方品にも詳しくなる
- メリット:医薬品だけでなく、スキントラブルに対応できる化粧品類などの知識も身につく
- メリット:雑貨においても、殺虫剤や洗剤などは化学成分なので、詳しくなる。
- メリット:店長業務などを行えば、在庫管理や売り上げ管理など数字に強くなる。
B/S P/Lなども読めるようになる。 - メリット:勉強が嫌いなら、正直勉強しなくっても何とかなる。
ここまで見ると、調剤なんてやらなくてもいいんじゃないかと思えてきます。
ドラッグストアのデメリット
一方、ドラッグストアから調剤薬局へ移った立場として、ドラッグストアのデメリットを整理してみます。
うすうす気づいているものから、気づかないものまであります
- デメリット:医療用医薬品に疎くなる
これは当然のことですよね。でも、取り残され感は想像以上です。 - デメリット:薬剤師としての勉強の機会が少ない
ドラッグストアでは、そんなに高度な薬学的知識は要求されないので勉強しないです。
中には自主的に勉強している人もいますが、実際にかかわっていないと知識として定着はしません。
(私も、ドラッグストア店長時代は、いつでも調剤ができるようにと勉強はしていたつもりでしたが、いざ薬局に入ったら歯が立ちませんでした・・・) - デメリット:日曜・祝日に休めない。結婚・子育てをするにあたって、これは痛い。
- デメリット:調剤業務は、思ったより難しい。ドラッグ売り場で働くより難しいことに気づけない
お分かりいただけただろうか。
一見、デメリットよりもメリットの方が数こそ多いが、最後の、調剤業務の難しさに気づけない点は致命的だと言えます。
調剤業務の難しさに気づけない
ドラッグ薬剤師が、調剤業務の壁にぶち当たったことを涙ながらに語る
私も、同じドラッグストア薬剤師店長の友人も、
「ドラッグストアで店長やっているくらいなんだから、処方箋通り薬出すだけの調剤なんて、楽勝じゃん」
と思っていました。
しかし、いざ調剤業務に入ってみると、思いのほか大変なことに気づかされることとなりました。
- 処方箋は一般名処方で、成分名と商品名が繋がらない。
- 処方箋通り薬を集めればいいというのは間違った認識だった。
- 保険証も公費も自賠責も労災も、さっぱりわかりません。
- レセコン入力(処方箋をパソコンに打ち込む 事務さんがやることが多い)も難しくて、覚えるのに苦労した。
- 錠剤取りそろえるのも、何の薬かわからなければどこにあるのかも探すのに時間がかかる
- おまけに、10錠シートや14錠シートがあり数え間違う。
- いざ薬を渡す段階でも、何の薬か聞かれて即答できず、添付文書の見方も微妙・・・
- 患者さんのお薬手帳を見ても、自分の薬局以外の薬が出てくるとさっぱりわからない。
(特に、専門的な薬や、古い病院のふるーい薬、変わった名前のジェネリック薬品などに苦労しました)
はっきりいって、自分よりも調剤事務のパートさんのほうがよっぽど薬の名前や成分名、保険制度などをわかっており、入った瞬間薬局のお荷物状態でした。
ドラッグストアで営業ばっかりやっていた人間なので、薬学部で勉強したことはすでに忘却の彼方に行ってしまっていました。
おまけに、その間にも医療はどんどん進歩していました。
調剤薬局に身を置いていても常に勉強が必要なのに、普段勉強していないのだからついていけるわけもないです。
店長として長年築き上げたキャリアやプライドは一瞬のうちに崩れ去りました。
今まで一体自分は何をやってきたんだろう?
ほんとうに調剤薬局でやっていけるのだろうか?
調剤ミスしてしまったらどう責任をとればいいのだろうか?
考え出すと、涙が・・・
幸いにも、薬局のほかのスタッフも、最初はそんなものだということを理解してくれて、足手まといになりながらも必死で追いつこうとする自分を助けてくれました。
ドラッグストアから調剤薬局へ移ってから、1年くらいは毎日仕事が終わってから勉強していたことは言うまでもありません。
そして、その間にも、何人か中途入社した人がいました。
そのなかでも、製薬会社に勤めていた50代くらいの人は、調剤についていけずにすぐに退職してしまったと聞きました。
新しいことを覚えるには、やはり早い方がいいのだと、そして自分はぎりぎり間に合った(と思いたかった)
今でこそ、新人薬剤師に、「調剤一筋十数年!」的なオーラを出せるようになりましたが、ここまでできるようになるには結構苦労しました。
(まあ、やっていることは普通の管理薬剤師のスペックですが・・・)
調剤薬局:薬を棚からとって袋詰めするだけの段階でも結構難しい
涙なくしては語れなかった先ほどのエピソードのほかに、もうひとつ忘れてはならないドラッグストアのデメリットがあります。
ドラッグ薬剤師は、日曜、祝日に休めない
若いうちは、ドラッグストア勤務で平日に休みをとって、空いていて安い時に旅行ができるメリットが大きいと思います。
結構楽しかったです。
しかし、結婚して子育てとなると話が違ってきます。
まして、今は共働きが当たり前な時代です。
ドラッグのデメリット2つは、調剤薬局のメリットになる
ここまでで、ドラッグストアで働くデメリット2つ
- 調剤業務の難しさに気づけない
- 日曜日に休めない
を解説してきました。
しかし、裏を返せばこの2つは、調剤薬局に転職する2つのメリットということになります。
どちらの職種も経験しているので、どちらの仕事の大変さや楽しさも十分にわかります。
それぞれの良さがわかる以上、どちらも経験すれば視野を広げることができるのではないか。
少なくとも、私の経験ではそう考えます。
また、結婚などのライフスタイルの変化に備えて仕事について考えておくことも必要なのではないか。
うわべだけで、ドラッグストアはどういう仕事だ、調剤薬局はどんな仕事だといった情報はあふれています。
ドラッグストアや薬局チェーンの会社の情報も、ネットにはあふれるくらい存在します。
でも、どちらもそれなりに経験した薬剤師からの視点で解説したものは見当たりませんでした。
ドラッグストアの仕事だけに行き詰まりを感じていたかつての自分に語り掛けるつもりで今回の記事を作成するに至りました。
また、一度身につけたOTCやドラッグ薬剤師のスキルはそう簡単になくなるものではないです。
今でも、薬局ではレジ打ち早いです。お釣りのミスもダントツ少ないです。(笑)
いつか調剤薬局からドラッグストアに戻った場合は、より薬剤師らしくなって活躍できると思います。
何となく今の仕事にモヤモヤしている
スキルアップやジョブチェンジについても、漠然と考えているが行動には移していないケースも多いと思います。
自分も、もやもやしたまま5年くらい考えていました。
転職説明会に行く気もなれないし、すぐに転職も考えていないし、で5年くらいたちました。
とりあえず転職サイトには登録したものの、電話でのやり取りがおっくうになりしばらく放置もしてしまいました。
コロナ時代を追い風に変えよう!
でも、いまは、私に時代と違って、急速にIT化が進みました。
加えて、コロナウイルス対策によるリモート化が一気に進みました。
そのおかげで、
転職説明、企業説明もZoomなどのオンラインで気楽に参加できるようになりました。
とりあえず登録だけしておけば、あとは気が向くまで放置でOKなのが、薬剤師転職サイトのメリットです。
いざ転職となったときに慌ててやるよりも、少しずつ始めておくのもいいと思います。
そして、ここまでの話だとどうしても、スキル的に調剤薬局>ドラッグストアとなりがちですが、調剤薬局においてドラッグストアの経験が生かせることも多々あります。
- 投薬時に患者さんとコミュニケーションが必要となるので、必然的にドラッグストアでの接客経験が生きてきます。
- 知識が追い付いてくれば、ドラッグストアの接客スキルを活かして、数年目の薬剤師と比べても投薬では負けない状態に追いつきました。
- また、管理薬剤師となれば、薬局の在庫管理や、季節変動のある医薬品の在庫コントロールなどに、ドラッグストア時代の経験が生かされました。
これからこの薬が出るから、仕掛けて発注しておこうなどという発想は、調剤薬局ではなくドラッグストア的な発想でうまくいったこともあります。
なので、別の機会には、調剤薬局でしか働いたことのない人がドラッグストアの経験も積んでおいた方がいい理由も解説しようと思っています。
視野を広げるのに遅すぎはないと思います。
この記事が皆様のスキルアップにつながるきっかけになることに期待して、そろそろ終わりにしたいと思います。
自分のジョブチェンジの過程なども記事にしていますので、参考にどうぞ。
長い文章最後までお付き合いいただきありがとうございました。