こんにちは。薬剤師&ケアマネ卵&ブロガーのゆるやく
です。
今回は
重複投薬・相互作用等防止加算についてです。
重複投薬・相互作用等防止加算は、過去の変遷を経て現在の形になっています。
そのため、正しい算定方法を理解していなかったり、不適切な算定になっていたりして個別指導においてチェックが入りやすい加算となっています。
そんなときにも役立つかもなリカバリー法もありますので是非最後までお付き合いください。
いわば個別指導の山場にもなる所なので、しっかりさえておきたいところです。
なお、こちらはいち薬剤師の見解であり、正式なものではありませんので
不明点などは薬剤師会に問い合わせる等していただき、確実性を担保して
いただきたいと思います。
また、あくまでも個別指導対策に特化した内容ですので、
もっと良い薬歴の書き方や、処方解析などにはあまり言及していません。
また、この記事が原因で発生したいかなる事象にも一切責任は負いかねるとともに、不備などを発見した場合は、お知らせいただけるとありがたいです。
はじめじ
まずは、重複投薬・相互作用防止加算について、算定要件から確認します。
保 医 発 0 3 0 5 第 1 号 平 成 3 0 年 3 月 5 日
(28) 重複投薬・相互作用等防止加算
ア 「注4」の重複投薬・相互作用等防止加算は、薬剤服用歴の記録又は患者及びその家
族等からの情報等に基づき、処方医に対して連絡・確認を行い、処方の変更が行われた
場合に算定する。 ただし、複数の項目に該当した場合であっても、重複して算定する
ことはできない。なお、薬剤服用歴管理指導料を算定していない場合は、当該加算は算
定できない。
イ 「イ 残薬調整に係るもの以外の場合」は、次に掲げる内容について、処方医に対し
て連絡・確認を行い、処方の変更が行われた場合に算定する。
① 併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む。)
② 併用薬、飲食物等との相互作用
③ そのほか薬学的観点から必要と認める事項
ウ 「ロ 残薬調整に係るものの場合」は、残薬について、処方医に対して連絡・確認を
行い、処方の変更が行われた場合に算定する。
エ 重複投薬・相互作用等防止加算の対象となる事項について、処方医に連絡・確認を行
った内容の要点、変更内容を薬剤服用歴の記録に記載する。
オ 同時に複数の処方箋を受け付け、複数の処方箋について薬剤を変更した場合であって
も、1回に限り算定する。
重複投薬・相互作用等防止加算の点数は?
重複投薬・相互作用等防止加算の点数は以下の通りです。
重複投薬・相互作用等防止加算(残薬調整) 30点
重複投薬・相互作用等防止加算(残薬調整以外) 40点
残薬調整に係るもの(30点)
残薬調整関係については,
残薬について「処方医に対して疑義照会」を行い「処方の変更」が行われた場合に算定できます。
算定できる点数は30点です。
残薬調整に係るもの以外(40点)
残薬調整以外の場合については、
「重複投薬防止や相互作用防止」等の目的で、
「処方医に対して照会」を行い
「処方の変更」が行われた場合に算定できます
【変更】 なので、削減以外にも、日数延長、薬剤追加も含まれる
算定できる点数は40点です。
個別事項での指摘項目を確認
「平成30年度に実施した個別指導において保険薬局に改善を求めた主な指摘事項」
にて指摘されたことに基づき1つずつ解説します。
重複投薬・相互作用等防止加算が算定できるのは、処方変更があったときだけ
「平成30年度に実施した個別指導において保険薬局に改善を求めた主な指摘事項」より
Ⅲ-1-6 重複投薬・相互作用等防止加算
〇 重複投薬・相互作用等防止加算について、次の不適切な例が認められたので改めること。
・処方の変更が行われなかった場合に算定している。
かつては、変更なしでも算定できた加算も存在していました。
それと混同してしまっているケースが考えられます。
知識のアップデートは必要です。
<参考 今は無い加算です>
重複投薬・相互作用防止加算 処方変更有20点 処方変更なし10点
正しい知識のアップデートのために、次の2冊は必携です
毎回デザインの色が変わるので、最新版を持っていないと指導官のスイッチが入ってしまうらしいです(笑)
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疑義照会・変更の記録を薬歴に記入せよ
「平成30年度に実施した個別指導において保険薬局に改善を求めた主な指摘事項」より
・薬剤服用歴の記録に処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容の記載がない。
変更の経緯は、疑義照会と同様、調剤録、薬歴に残す必要があります。
疑義照会による変更が、薬学的によるものか精査せよ
「平成30年度に実施した個別指導において保険薬局に改善を求めた主な指摘事項」より
・処方医に対して連絡・確認を行った内容が薬学的観点から必要と認められる事項ではない。
ここについてが、今回の解説のメインとなります
薬学的理由ではないことが指摘されています。
算定したものに対して、「それは薬学的とは言えない!!」とダメ出しされ査定、返還指示が行われていると考えられます。
個別指導にいて、査定・変換指示がされることのダメージは大きい。
変換件数が〇件以上で来年再指導
というような基準があるようです。
今一度、疑義解釈も参考にしながら確認していきます。
疑義照会による変更が、薬学的によるものか否か
- 重複投薬・相互作用
- 重複投薬・相互作用等
この2つについて見ていきましょう。
ケース1 重複投薬・相互作用
重複投薬・相互作用においては、
- 同種同効薬
- 併用禁忌・併用注意
これらの薬品が複数医療機関から処方されていたケースなどに適用
以下の場合、疑義照会→処方変更となれば算定可能
- 1枚の処方箋中に重複投薬・相互作用が存在
- 複数枚同時受付で、重複投薬・相互作用が存在
- お薬手帳の情報、患者聞き取り情報の結果、他科受診との重複投薬・相互作用が存在
- 重複していた、相互作用があったため疑義照会を実施
- 疑義照会の結果、処方が変更となった
- 薬学的観点によるものとの判断が容易なので、算定できる
ケース2 重複投薬・相互作用等
等の部分に、「そのほか薬学的観点から必要と認められる事項」がかかわってきます。
- アレルギー歴
- 副作用歴
- 副作用防止のための追加投薬提案
- 薬学的観点から投与間隔の延長
これらに基づき、疑義照会を行い処方変更となった場合も算定できます。
しかし、注意点かあります。
保険薬局業務指針 Q112より
Q:①単純な入力ミス等による変更(例えば、食後から食前へ)は、処方変更に該当するのか?
A:該当しない。薬歴に基づく薬学的な業務でなければ、当該加算の対象とならない。
保険薬局業務指針 Q115より
Q:「そのほか薬学的観点から必要と認められる事項」とあるが、具体的にはどのような内容がふくまれるか
A:薬剤師が薬学的観点から必要と認め、処方医に疑義照会したうえで処方変更がされた場合は算定可能である。具体的には、アレルギー歴や副作用の情報に基づき処方変更となった場合、②薬学的観点から薬剤の追加や投与間隔の延長が行われた場合は対象となるが、保険薬局に備蓄がないために処方医に疑義照会して他の医薬品に変更した場合などは当てはまらない。
「平成30年度に実施した個別指導において保険薬局に改善を求めた主な指摘事項」
・処方医に対して連絡・確認を行った内容が薬学的観点から必要と認められる事項ではない。
というのは
変更が「薬学的観点か否か」ということが重要です。
薬学的観点か否かの判断基準
①単純な入力ミス等による変更と、
②薬学的観点から薬剤の追加や投与間隔の延長
について実例をもとに解説します。
①【単純な入力ミス等】の範囲はどこまでか?
厄介なのは、ここにも「等」が入っていることである。
「等」が入っていなければ、「入力ミス」に限定されるのでわかりやすいです。
用法がなかったり、容量がなかったりという凡ミス以外は算定可と判断できそうです。
等が入ることにより、単純ミスは算定できないという判断となります。
単純ミス 事例1
凡ミスの入力ミス以外の考えられる例:
- 3g包装しかない漢方の2.5gでの処方
- 7枚入りしかない外用剤の6枚単位での処方
- 軟膏剤を10gのところ10本での処方
これらは明らかに単純ミスです。
誰が何と言おうと単純ミスです。
ではつぎのものはどうか?
単純ミス事例2
- 食直前投与の糖尿病食後過血糖改善剤が、食後となっていた場合
- 1日1回のモーラステープが1日2回となっていた場合
- 就寝前投与のキプレス錠が夕食後投与となっていた場合
これらの処方に問題があると判断するためには薬学的知識が必要です。
しかし、保険薬局業務指針 Q112にて【単純な入力ミス等による変更(例えば、食後から食前へ)】となっていることを見ると、算定に躊躇します。
単純ミス事例3
すると、日数の延長においても、添付文書であっさりと判明するミスがあります。
例えば、5日間投与するタミフルが3日分のみの処方しかないケース。
患者に聞き取りをしても、次回受診が3日後ではない場合
単純ミス事例4
投与期間の延長がなされても、次回予約日から逆算して投与日数が足りないということは単純ミスと判断されます。
しかし、処方箋に次回受診日が書いてあるわけではなく、次回受診がいつなのかは薬剤師が患者さんと会話したうえで聞き出せる情報です。
それを考慮すると算定してもよさそうですが、この程度で薬学的なんて言ったら、薬剤師のレベルが下がるという判断で算定できないと考えた方が無難です。
上記のような算定で、算定して個別指導で争ったことがある方は、ぜひ結果がどうなったか教えていただきたいとおもいます。(コチラまでお知らせを!!)
個別指導での実例
次のような興味深いケースがありました。
これは私の個別指導時の実例となります。
単純ミスに近いが算定して査定されなかった事例1
どこまでが①単純な入力ミス等による変更か
患者さんが退院後の処方箋
入院中、院内処方でもらった薬がありました。
その薬の一部が、手持ち分と今回の処方量を計算して次回受診までに不足することが判明しました。
疑義照会した結果、一部の薬が延長されたため加算を算定しました。
そしてその患者さんが個別指導に当たりました。
- 院内処方での残薬を把握
- 次回までに不足することを確認
- 薬の内容から判断して継続が必要と判断
上記を根拠として疑義照会で延長したことを、薬歴をもとに指導官に伝えたところ返還にはなりませんでした。
結論:算定の根拠を薬学的理由に基づき説明できれば、査定、返還は回避できる。
いや、それ切らしちゃダメでしょ!
というアセスメントがあったためセーフになったと思われます。
単純ミスに近いが査定されなかった事例2
②どこまでが薬学的観点か
新患で、他院より転院してきた患者
循環器系の薬のみの処方だったが、患者のお薬手帳には皮膚炎用の軟膏類も処方歴があった。
そのため、患者に確認したところ、必要だが今回処方されなかったという回答を得た。
患者が必要としていることに基づいて疑義照会した結果、手帳に記載されている皮膚炎用軟膏が追加されることとなった。
このケースで「そのほか薬学的観点から必要と認める事項」と考え重複投薬相互作用等防止加算を算定しました。
この患者さんが個別指導に当たりました。
よくよく考えるとグレーなのですが、
- 患者さんの皮膚症状がまだ改善しておらす継続が必要と判断
- 判断したことを薬歴に記載しておいた
そのため、その説明で指導官はやむを得ず納得したようでした。
治療にかかわったという姿勢アピールで今回は切り抜けられたのだと思いますが、心配なようであれば算定しないことをお勧めします。
結論:薬学的観点が何かを明確に説明で切れば、査定、返還は回避できる
ここまでのまとめ
個別指導を意識しなければ、どこまでが薬学的か真剣に悩まなくても、処方変更が行われれば算定可否の判断は難しくないと思います。
すなわち、
- 薬歴や、患者及びその家族等からの情報等に基づいているか
- 処方医に対して疑義照会を行ったか
- 疑義照会の結果、処方の変更が行われたか
- 処方医に疑義照会を行った内容の要点、変更内容を薬歴に記録したか
①~④を満たしていればよいと思います。
ただし、個別指導を控えている場合は、変更の理由が医師のケアレスミスではなく、薬学的内容であることを示し、しっかりと薬歴に記入しておくことが必要です。
また、個別指導時には、その薬歴に基づいて、薬学的理由をしっかり説明できることが重要です。
最後に
重複投薬・相互作用等防止加算は、点数以上に意義深い加算です。
薬剤師の関与が患者さんの健康や医療費削減につながることを記録として残すことができますから。
患者さん対応で聞き出した内容をもとに疑義照会を行いましょう。
そして算定につなげましょう。
対人業務を強化していけば、薬剤師の存在価値の向上にもつながります。
この記事が、対人業務のモチベーション向上と、個別指導通過のお役に立てることを願っています。
以上です!